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竜使いのラーシャ  作者: 紅月
絶望と過去と忘れられない人
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決断

「ベルならきっと出来ると思うよ…君はいろんな人を惹きつける魅力があるから。でも、俺はこれ以上ベルの負担になりたくないんだ」


 その言葉にベルは息を飲む。

 嫌な予感が過ぎり、思わずベルは一歩後ろに下がる。

 ここには、リーツェだっている。

 先程のように、取り乱さないよう己を叱咤すると口を開く。


「別に負担だなんて思ったことは一度も…」


 ない。


 そう言おうとして、ベルは口を閉ざした。

 ジルヴァの目から一筋の涙が溢れ落ちたから。


「ジルヴァ…?」


 掠れた声で名を呼べば、ジルヴァは静かに首をよこにふ横に振った。


「別れよう、ベル。俺は君には相応しく無い」


 静かに、けれども力強くそう言うジルヴァにベルは言葉を失う。

 胸が軋みだし、頭がグワングワンと揺れるような気がする。

 まるで世界が崩れ落ちていくような気さえする。

 なんで、別れようと言い出したのか、理由を聞かなきゃ…。

 それなのに喉が張り付いて声が出ない。


「本気で言っているのか?ジルヴァ」


 口をパクパクさせるだけで何も言えないベルを見かねて、リーツェが問い掛ける。


一時いっときの感情で全てを捨てようとしているのではないか?」

「そんなこと…」

「もう少し、頭を冷やしてから答えを出してもいいのではないか?」

「…」


 リーツェに諭され、ジルヴァは黙り込む。

 しばらくして、ずっとジルヴァの肩にいた相棒のラドンが口を挟んだ。


【ジルヴァ、女王様の言う通りだ。今すぐに答えを出さなきゃいけないわけじゃないんだしさ、もう少し考えよう】

「…そうだ、な」


 ジルヴァは息を吐き出すと、今日何度目かの頭を下げた。


「すみません、また来ます。…今日はこれで」


 そう断りを入れ、リーツェから許可が降りるとジルヴァは執務室から出て行く。

 その様子を見届けた後、今だに体を凍り付かせ動けないでいるベルの方へと視線を向けた。

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