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竜使いのラーシャ  作者: 紅月
絶望と過去と忘れられない人
726/825

合否

【扉が!!】


 セツが緊張をはらんだ声で叫ぶ。

 顔を上げたラドンも緊張して、息を呑む。

 ジルヴァは合格出来ないと覚悟はしているものの、万が一の事がある。

 どちらの相棒が先に出てくるのかと、二匹の竜が固唾を飲んで見守る中、扉がゆっくりと開いた。

 白く光り輝く扉の向こうで人影がゆらりと姿が見える。

 セツは扉の人物を見極めようと、目を凝らす。

 それから直ぐに、嬉しそうに尻尾を揺らした。


 髪から水滴を滴らせながらロベリエが扉を抜ける。


【ロベリエ!おか、えり…】


 数時間しか経ってないが、あまりの嬉しさにロベリエの前まで駆けつけたセツは、その表情を見て言葉を喉に詰まらせた。

 血の気の引いた顔に、絶望に打ちひしがれた目。


 今年もダメだったのだ。


 セツはなんて言ったらいいのかわからず、ロベリエの前で黙り込む。

 どれくらいの間、そうしていただろう。

 不意にロベリエが顔を上げると、弱々しく微笑んだ。


「ごめん、今回もダメだった」


 目から流れ落ちるのが涙なのか、水なのかわからない。

 わからないが、今自分がやるべき事は何なのかはわかっている。


 セツは体を小さくすると、ロベリエ顔にギュッとしがみついた。


 小さい頃から、泣き顔を見られるのを嫌がるロベリエの為に、彼女が泣く時はいつもこうやって隠してやっていた。

 最近は泣いていなかったが、小さい頃とセツの対応が同じで、ロベリエは思わず小さく笑う。

 そして、肩を震わせながら顔にしがみつくセツの体に腕を回して、抱きしめた。


「今年が最後だったのに…!」


 嗚咽に声を震わせてそう言うロベリエの頭を抱きしめながら、セツはその頭に頰を寄せた。


【大丈夫だって。来年もチャンスがある。ほら、ラーシャだってさ…試験に落ちるかもしれないだろ…?そんな気を落とす必要はないって】


 努めて明るい声で励ますセツに、ロベリエは首を横に振る。


「ラーシャはきっと私と違って一回で受かる」

【…】


 そうきっぱりと言い切る、ロベリエにセツは黙り込む。

 セツも口ではそう言ってはいたが、きっとラーシャは世界樹の試練を合格出来ると、確信していた。

 ラーシャとロベリエにはある点が決定的に違っているから。

 それを伝えてやりたいが、それを伝えてしまったら最後、ロベリエは今後一切試練を受ける事を許されなくなってしまう。

 こんなに苦しんでいるロベリエに何もしてやれない、自分に苛立ちを覚えながらセツは彼女の心を癒そうと必死に抱きしめ続けた。


 その後ろで再び輝き出し、扉が開くとジルヴァ が出てきた。

 ラドンと目が合うとジルヴァは、肩を竦めさせて首を横に振る。


 ああ…、やっぱりダメだったか。


 ラドンは心にズドンと鉛が落ちた心地になると、首を横に振り気持ちを切り替える。


 一番、ショックを受けているのは相棒なのだ。自分が辛い顔をしてどうするんだ。


 ラドンは息を吐き出すと、大切な相棒の元へと向かった。

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