緊急事態
突然入った通信にラーシャは慌てて、耳飾りに触れた。
ニア達を送り届けるだけなのに、時間かかり過ぎだと怒られるのかと、内心ドキドキしながら口を開く。
「はい、こちらラーシャです!どうか…『今すぐ駐屯所に戻ってきて!!!』
ラーシャの言葉を遮るように、フリーラが通信石の向こうから叫び声を上げる。
その声は震えていて、尋常じゃないのが伝わって来た。
ラーシャは困惑して、同じ通信を聞いているセルジュとベインに視線を向けると二人も訳がわからないという顔をしている。
「フリーラ副団長、何かあったんですか?」
『説明は後!早く来なさいっ!』
セルジュの質問にピシャリとフリーラは言い放つと、ブツリと通信を切った。
ラーシャ達は顔を見合わせると、すぐに頷き合う。
「ごめん、すぐに駐屯所に戻らなきゃ」
「何かあったのか?」
ソルの質問にラーシャは首を横に振った。
「わからない。けど今すぐ戻って来いって指示が来たの。…また後でみんなでお祝いしよう」
そう言って、体を元の大きさに戻したルーキスに乗り込むラーシャにニアは駆け寄る。
「ラーシャ!本当に、本当にありがとうございました…!このお礼はまた後日。もちろん、騎士団にもお伺いさせていただきますわ」
「いいえ、ニアが無事で本当によかった!落ち着いてからでいいからね?むしろ騎士として当然だからお礼なんていらないから!…ていうか、ニアも疲れてるだろうから、今日は無理しないで休んでね!…ルーキス!」
一気にラーシャは捲し立てると、合図を出す。
それを受けて、ルーキスは翼を大きく羽ばたかせて一気に空へと舞い上がった。
その後をすぐに、ニクスとナイラが続く。
目指すはもちろん、駐屯所。
一体何があったのかわからないが、胸の辺りがざわつき、ラーシャは胸を抑えた。
『急ごうぜ!さっきから嫌な予感がする』
『ああ。…次から次へと問題ばっかりだな。一体どうなってるんだ』
ベインとセルジュの会話を通信石越しから聞きながら、ラーシャは深呼吸をする。
この事件はまだ、終わってないのだ。
「ルーキス、気を引き締めていこう」
【ああ…!飛ばすからしっかり捕まってろ!】
ルーキスは言うや否や、飛行速度を一気に上げた。




