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竜使いのラーシャ  作者: 紅月
勇気と無謀と思惑
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拒否

 戸惑った顔をするラーシャから、すかさずセルジュがソルを引き剥がす。


「いきなり抱きつくなよ…。ラーシャが驚いてるだろ?」


 自分だってバルキルザで、ラーシャをいきなり抱きしめたくせに、自分のことを棚に上げて呆れたように言うセルジュ。

 ソルは体をフルフル震わせて、目に一杯の涙を溜める。

 それ見てセルジュはギョッとした。


「そ、ソル?どうしたんだ?」

「くっ…!みんな無事でよかった…っ!!!」


 顔をクシャッと歪ませると、ついにソルは泣き出してセルジュに抱きつこうと手を伸ばす。

 涙と鼻水で顔を汚すソルの頭を押さえて、必死にそれを阻止するセルジュ。


「なんで嫌がるんだよ…?ここは、抱き合って再会を喜ぶところだろ!?」

「涙と鼻水でベシャベシャな状態で抱き合うのは、嫌だ」

「酷い!!」


 セルジュの辛辣な言葉に、ソルが涙を流しながら抗議するその横で、ベルナデッタは顔を顰めさせる。


【そんなに顔を醜くさせて…。せっかくラーシャ達が生還したと言うのに、笑って出迎えられぬか?】

「う、うるせぇ…!!ホッとしたら、涙が…勝手に出てくんだよっ!!」


 ズビッと鼻を啜りながら、文句を言うソルに後から追いかけて来たシーラがそっとハンカチを差し出す。


「ほら、気持ちはわかるけど、ベルナデッタの言う通りだわ。…使いなさいよ」


 シーラとハンカチを交互に見た後、ソルはおずおずと受け取り目に押し当てた。


「…ありがとう」

「どういたしまして。…ってなによ?」


 ニヤニヤしながら、今のやり取りを見ていたベインにシーラは目を細め、低い声で問い掛ける。

 それを見て、ベインは慌てて目を逸らす。


「別に!!あ、そうだ!アルス!!魔石!あれのおかげで助かった!ありがとうな!」


 シーラの後ろの方に立って、みんなの様子を伺っていたアルスは突然声を掛けられ、ビクッと肩を震わせた。


「は、はひ!?な、何がですか…!?」


 動揺するアルスを見かねて、オルフェが翼で優しく背中を叩く。


【ほら、あの時ラーシャに渡した魔石の事だよ。きっと】


 オルフェの言葉で、アルスはハッとしてラーシャに駆け寄る。


「ら、ラーシャ!あの魔石発動したんですか!?」


 あまりの気迫にラーシャは、思わず後退ると頷いた。


「えっと…うん。…なんで発動したのかはわからないんだけど、アルスがくれた魔石がなかったら本当に死んでた…と思う」


 ラーシャはそう言って懐から綺麗に折りたたまれたハンカチを取り出すと、それを丁寧に開いて、大切に保存した魔石の欠片を見せた。


「役目を果たした途端、砕け散っちゃって…ごめん。せっかく、アルスから貰ったのに…。私がもっと強ければ、魔石も粉々にならなかったかも」


 残念そうなラーシャに、アルスはにっこり笑うと首を横に振った。

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