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竜使いのラーシャ  作者: 紅月
勇気と無謀と思惑
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経験者は口を閉ざす

 その言葉に、ラーシャは嬉しそうに頷いた。


 大切な人たちが誰一人死ぬことなく、助け出す事が出来て本当によかった…。


 ラーシャがそう思った刹那、アルスから貰った守護の魔石がピシッと音を立ててヒビが入ると、次の瞬間には粉々に砕け散った。


「アルスからもらったペンダントが…!」

「役目を終えたんだな」


 驚いて声を上げるラーシャにセルジュは静かに告げた。


 魔石が砕け散るということは、石の中の魔力を使い果たしたという事だ。

 きっとこの魔石のおかげで、ラーシャ達は崩壊する要塞から生きて出て来たのだろう。


 だからこそ…。


 セルジュは足元に落ちた欠片に視線を落とすと、しゃがみ込んだ。

 大切な友人達を救って砕け散った魔石を、感謝気持ちを込めて丁寧に拾い集め、それをハンカチに包むとラーシャに手渡した。


「ほら、石の効力が無くなってもアルスの思いがなくなるわけじゃない。…お守り代わりに大切に持っておけよ」

「…そうだね」


 ラーシャは魔石が包まれたハンカチを大切そうに、胸に抱きしめてから懐にしまう。


 帰ったら必ずアルスにお礼を言うと心に誓って。


 それからセルジュ達から少し遅れて、第八騎士団、第五騎士が到着すると一気に周囲が騒がしくなった。


「怪我人は!?」


 レミが第五騎士団の医務官と共にいち早く、ラーシャ達の元へ駆け付けてくると、すぐに視線を走らせた。


「アルボル、まずはそこのに寝てる黄竜からね。あとはそこの君も。黄竜の次ね」


 レミはアルボルに指示を出しながら、ダルテを指差す。

 それを見たベインが憐れんだようにダルテの肩を叩いた。


「可哀想に」

「何が!?ただの治療だろ!?」


 不穏な空気を感じてダルテが叫ぶが、アルボルの治療方法をしている者は全員、口を閉ざした。


「えー…」


 ドン引きしているダルテにアルボルは、パチンとウィンクした。


【大丈夫大丈夫!すぐ終わるから!じゃ、ルーキス、この子を起こしてくれるの手伝ってくれる?】

【わかった】


 アルボルに指名されたルーキスは、大人しく気絶するエルを起こしに掛かる。

 可哀想だが、大きいままではアルボルの口に入らないのだ。

 その様子を少し離れていた見ていたラーシャは、第五騎士団の医務官に声を掛けられた。

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