友の帰りを待つ
【夜が明けたな?ソル】
ニアの屋敷にある庭で、朝焼けに染まる空を見上げながら、ソルの頭の上に乗るベルナデッタが小さく呟いた。
デイルたちがバルキルザに向かったあと、待機となったフリーラたちとともに、ソルたちもニアの屋敷を訪れていた。
屋敷の応接間には、憔悴しきったニアとダルテの両親。そして、ダルテたちの危機を知って顔を青ざめさせたシーラと、その相棒の緑竜ロスタも駆けつけていた。
部屋の空気は重く、息苦しかった。
それに耐えきれなくなったソルはベルナデッタ、アルス達を連れて、息抜きがてらに外の空気を吸いに来ていた。
空気の重いあの空間では、ニア達の無事を純粋に願うことなど、とても出来るような状況では無かった。
ソルは表情を曇らせると、肩をすくめさせた。
「そうだな…。ラーシャ達が無事だといいんだけどな…」
「だ、大丈夫です!きっと、ラーシャ達は無事に決まってますっ!」
不安そうに呟くソルに、同じように空を見上げていたアルスが勢いよく断言した。
あまりにもアルスが自信満々に答えるので、ソルは思わず吹き出して笑うと頷いた。
「だよな!ラーシャたち、なんだかんだでいつも無事に帰ってくるもんな!」
「そうですよっ!」
アルスは、当然とばかりに力強く言って、再び赤と青が溶け合う美しい空に視線を向けた。
それに促されるように、ソルも空を見上げてふと、ある事を思い出す。
「…そういえば、アルスは出発前にラーシャに何を渡してたんだ?」
「え?」
ソルの質問に、アルスは肩に乗るオルフェと顔を見合わせる。
「ほら、“肌身離さず絶対に持ってて”って言って渡した奴だよ」
ソルの言葉で、アルスは納得がいったように頷く。
「あれは、守護の魔石です。でも普通の魔石とはちょっと違うんですよ」
【普通の魔石じゃないと?一体どう言う事だ】
ベルナデッタも興味深そうに、アルスに言葉の続きを促す。
相棒のソルが装飾職人の見習いだからか、いつの間にかベルナデッタも装飾品はもちろん、魔石なども気になるようになっていた。
それに気づいたソルは、ベルナデッタに気付かれないように小さく笑う。
彼女はプライドが高いから、冷やかすようなことを言えば、機嫌を損ねるのは目に見えている。
とはいえ、ソル自身、普通の魔石じゃない理由が知りたい。
ソルとベルナデッタから熱い視線を向けられ、アルスは少し気恥ずかしそうに笑った。




