届く声
その一雫を皮切りに、ニアの目から止めどなく涙が溢れ零れ落ちていく。
涙はダルテに降り注ぐが、一向に目を開かない。
息は僅かにしているというのに…、どうして…。
「ダルテ…!目を、開けてください…っ!!」
泣きながら叫ぶ、ニアの声が虚しく響く。
誰もが諦めかけた、その刹那…。
キツく閉ざされていたダルテの瞳がゆっくりと開いた。
「…っ!」
ニアは驚いて、息を呑む。
ダルテは寝ぼけているかのように、何度か瞬きを繰り返し、最初は虚だった瞳がニアを捉えた瞬間、輝きを取り戻した。
「…ニア?」
掠れた声でダルテはそう言うと、涙に濡れるニアの頰に手を伸ばして、涙を拭う。
「なんで、泣いてるんだ…?」
ダルテの質問に、ニアは困ったように笑って彼の両頬を包み込んだ。
「ああ、もう…!誰のせいだと思っているのですか…!!」
そう言い放って、ダルテに自分の唇を重ねた。
ラーシャは、滲んだ涙を人差し指で払ってから、ベイン達の方に視線を向ける。
大号泣していたベインはラーシャと目が合うと、真っ赤に腫らした目を細め、笑って頷く。
フォルテに至っては、顔を背けて柄にもなく肩を震わせていた。
そんな彼の頭を、体を小さくしたラソがヨシヨシと慰めている。
【よかったな】
ラーシャの右肩にルーキスが止まると、心からホッとしたように言った。
「うん、本当に」
ニアの大切な人が助かって本当に、本当によかった。
【愛ですねぇ】
左肩に止まったエルの言葉にラーシャは、頷きながら胸が温かくなる。
それと同時に、ようやく長い長い夜が明けようとしているのを感じた。
…が、その瞬間、身体中にチリチリとした痛みが走り、ラーシャは顔を強張らせた。
ラーシャの異変にいち早く気づいたルーキスが、怪訝そうな表情をする。
【どうした?】
「…げな、きゃ…!」
ラーシャは自分の顔から血の気がどんどん引くのを感じながら、叫び声を上げた。
「ここから、逃げなきゃ!!!!!」
その声と同時に、要塞が轟音を立てて崩れ始めた…。
本日の投稿時間が遅れてしまい申し訳ありませんでした




