必死の抵抗
「なんだと…?」
「気づきません?誰一人として逃げられないように、この要塞丸ごと入る障壁が張られているのを」
ニアの言葉にアルティは目を見開いて空を見上げる。
だが、どんなに目を凝らしてもアルティには障壁など見えない。
アルティは呆れた様に笑った。
「苦し紛れの嘘もここまで来ると笑えて来ますね?」
「嘘ではありませんわ。第八騎士団団長であるデイル騎士団長の相棒の竜は紫竜。彼の竜なら、この要塞を覆う障壁を張るのも容易いですわ。その証拠に僅かに光が屈折しているのがわかりません?」
そう言われたところで、アルティにはわからない。
ニアはため息をつくと、茶竜を指差す。
「試しに空に向かって石を飛ばしてみるのはいかがですか?」
ニアはそう言って、気づかれない様にアルティから少しずつ離れる。
障壁が張ってあるのは、本当。
警戒心の強いアルティの関心を自分から逸らすなら、嘘よりも本当の事を言った方がいい。
障壁の存在をアルティに気づかせて、少しでも時間を稼ぐ。
簡単に人質になるわけにはいかないし、言う通りに人質として攫われたとしてもダルテの解毒薬を簡単に渡すとは思えない。
だから、注意を逸らして時間を稼いで助けを待つ。
今のニアに出来るのはそれだけだ。
しばらく思案していたアルティはニアが自分から離れている事に気づき鎖を強く引く。
だが、それを想定していたニアはアルティに背を向けると、繋がれた両手でバルコニーの縁を掴み必死に抵抗する。
「こんな事して無事で済むと思っているのか!?お前の仲間の毒を浄化出来るのは、俺が持っている解毒薬だけなんだぞ!?抵抗するなら目の前で叩き割ってやろうか!」
ニアは唇を噛み締める。
こんな時、ラーシャならどうするだろう?
人の為に厄介事に自分から飛び込んでいく真っ直ぐでら、正義感の強い彼女なら…。
そこでフッと思わずニアは笑みが溢れた。
彼女の事だ、きっと無鉄砲に突っ込んでアルティから薬を奪うに違い無い。
自分にも出来るだろうか?
わからない、わからないけど、これ以上助けに来てくれた人達の足手纏いになるのも、アルティの言いなりになるのも嫌だ。
ニアは覚悟を決めると頭の中で、カウントダウンを開始した。
三…。
目を閉じて深呼吸する。
二…。
目を開き、首だけをアルティの方へと向けた。
一…。
パッと縁を掴む手を離す。
力一杯、鎖を引いていたアルティは抵抗する 力を失いそのまま後ろに尻餅をつく。
今だとばかりにニアは駆け出して、アルティの首から下げられている解毒薬に両手を伸ばした。
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