焦燥
「何故ここに!?周りに騎士団達は待機してなかったはずだぞ!?」
アルティは中庭に溢れかえる騎士達を見て叫ぶ。
ルイスから提供された、半径五十メートルを監視出来る魔道具を何箇所も設置して、執務室でその映像を映し出す魔道具を使って監視していたが、騎士達などどこにもいなかった。
それなのに何故…!!!
ギリっと奥歯を噛み締めてアルティは低く唸る。
状況は劣勢。
このままでは、捕まってしまう。
早々に退散した方がいいかもしれない。
アルティはチラッと隣で、さっきまでの絶望しきっていた顔が嘘の様に今では、希望に満ち溢れた表情をしているニアを見る。
幸いな事にこちらには、人質がいる。
これを盾にすれば逃げ切れる可能性はまだある。
たとえ自分以外のメンバーが全員捕まったとしても全く問題はない、悪事に手を染める者など吐いて捨てる程いるのだ。
カルミアの再建はいつだって出来る、今は逃げる事が先決だ。
そうと決まればすぐにでも行動に移さなければ、手遅れになってしまう。
「来い!!」
アルティに鎖を強く引かれ、バルコニーから身を乗り出す様に中庭を見ていたニアはバランスを崩しその場に倒れる。
「…っ」
「早く立て!」
再び鎖を引かれ、手首に鈍痛が走りニアは顔を顰めてノロノロと立ち上がった。
「申し訳ありませんが、状況が変わりましたのでお嬢様には俺と一緒に逃げて貰いますよ?」
「お断りしますわ」
ニアの言葉にアルティは怒りで体を震わせる。
さっきまではあんなに従順だったのに、自分が優勢になった途端これだ。
ニアを殴りたい衝動をグッと堪え、アルティは胸から下げた黄色い液体の入った小瓶を見せた。
それはダルテの毒の解毒薬。
「ペンダントにして持って来ておいて良かったですよ。言う事を聞かなければ、今すぐこれを叩き割りますけどよろしいですか?」
悔しそうな顔をして黙り込むニアに、アルティは満足そうに笑うと相棒である茶竜に命じて体を元の大きさに戻させる。
「まずはここから離れましょう」
余裕が出て来たアルティは丁寧な口調でニアにそう言って、まるでエスコートをするかの様に手を差し出す。
ニアはその手を一瞥した後、アルティを見つめた。
「…逃げても無駄ですわ」




