恩を
【んな、情けねぇ顔で謝んねぇでくだせぇ】
ナイラは意識が飛びそうなのを、必死に堪えてベインに笑い掛けた。
【ナイラ!大丈夫か!?…これは酷いな】
ルーキスもやっと竜が片付いて、ラーシャ達の元に駆け付けるとナイラの傷を見て顔を顰める。
【アルボルは何処にいるんだ?】
「要塞のはずれで今は待機してるはずだ」
ベインの説明にルーキスは頷く。
この状況では、戦えない。今は一刻も早くナイラの治療を優先した方が良さそうだ。
「おい!ベイン!!」
ルーキスが考え込んでいると、ベインを見つけたフォルテがラソに乗って来る。
【凄い怪我!痛そう…!!】
目に涙を溜めて言うラソを見て、ルーキスはある決断を下す。
【…ラソ、俺が合図したらナイラに刺さる鉄を消してくれ】
「でも、そうしたら傷口から大量の血が流れ落ちて危険なんじゃ…」
ラーシャが心配そうな顔をして言うとルーキスは頷いた。
【かなりな。…エルほど早くは飛べないだろうが、俺が全速力でアルボルの所まで運ぶ。少しでも早く飛ぶためにラーシャもベインも乗せてはいけない。…ラーシャ、頼むから俺がいない間に絶対無理だけはするなよ】
「ルーキス…。わかった、出来る限り努力するよ」
嘘でも“絶対に無茶はしない”と言わないラーシャにルーキスは苦笑しながら頷いた。
本当はラーシャから離れるのが怖い。
さっきの様に身を挺して誰かを守るだろうから。
それでもナイラはラーシャを命懸けで救ってくれたのだ。
絶対に死なせるわけにはいかない。
ベインはナイラとルーキスを交互に見ると、深く頭を下げた。
「ありがとう…頼む」
【よし、決まりだ。ナイラ、ラソが鉄を消したらすぐに体を小さくしろ。出来るか?】
ナイラが頷くのをルーキスは口を開く。
【よし、じゃあ行くぞ。ラソ】
【わかった!】
ラソが返事をするのと同時に鉄を消し去ると、ナイラはルーキスに言われた通り体を小さくする。
ルーキスが背中から夥しい血を流すナイラを抱き抱えると、地面を強く蹴り上げ一気に上昇したその刹那、敵の竜達がルーキスを見るや否や一斉に攻撃を仕掛けて来た。




