勉強を
ニアは戻って来ると、アルスに冷たいタオルを手渡して目を冷やすように指示をする。
「手慣れてるね」
ラーシャがそう言って褒めれば、ニアは得意げに笑った。
「私も毎晩泣いているので、目を腫らさないようにするのは慣れているのですわ」
「え!?そうなの!?どうしたの、何かあった?」
心配そうな顔をするラーシャに、ニアはクスッと笑って首を横に振る。
「すみません、冗談ですわ。こういった知識はあった方がいいと本を読んだだけですわ。ラーシャも、騎士なのですから応急処置などの本は読んだ方がいいですわよ?」
「え!?」
ニアの言葉にわかりやすいくらい目を泳がせて、ラーシャは何度もコクコクと頷いた。
「あー…。うん!今度読む!!」
「この反応…。絶対読みませんわね」
むぅ…とニアは頰膨らませると、ラーシャの額をピンッと指で弾いた。
「一応目を通してみればいいのに…。勉強になりますわよ?」
「読むよりも、実践の方が頭に入るんだよねぇ」
ラーシャはヒリヒリ痛む額を撫でながら、言い訳をすると話を変えるべくアルスの方を向く。
「ところで、アルスは目の方はどう?大丈夫そう?」
ラーシャの質問にアルスはタオルを目から離すと、少し腫れぼったい目で恥ずかしそうに微笑んだ。
「はい!ご迷惑おかけしました。…お陰様で腫れない様な気がします」
「よかったですわ。…あぁ、そういえば言い忘れていたのですが、私この後出掛ける予定があるので後、少ししかご一緒出来ないのですわ。申し訳ありません」
眉を下げて残念そうに謝るニアに、アルスが慌てて両手をブンブン振る。
「あ、あの急に来たのは私達ですから、気にしないで下さい…!!」
「ありがとうございますわ。それにしても、ラーシャよかったですわね」
「え?」
無事に話を逸らす事に成功して、ホッとしながらケーキを楽しんでいたラーシャは首を傾げた。
「何が?」
「アルスが来てくれた日がちょうどお休みでよかったですわねって意味なのですが…。そのお顔は…お仕事休みじゃ無いですわね…」
目をカッと見開いて固まるラーシャを見て、ニアはため息をつく。
「わす、忘れてたわけじゃ無いからっ!!!きょ、今日は準夜勤だから時間があるんだよっ!!!!!!」
「落ち着いて下さいな、ラーシャ。わかりましたから」
鼻息を荒げながら叫ぶラーシャをニアがまぁまぁと宥める。
「では、残された時間を思いっきり楽しみましょ?」
ニアの言葉にラーシャとアルスは同時に頷くと、雑談に花を咲かせる。
特にアルスが石刻師の弟子だと聞いていた瞬間のニアの目の変わりようが凄まじく、目を輝かせて、今までどんなもの作ったのか、師匠の取引先など根掘り葉掘り質問攻めを繰り広げ始めた。
「うわー、ニアの商売根性に火がついちゃってる」
【アルス、ドン引きしてるけど助けなくていいのか?】
ルーキスに聞かれ、ラーシャはちょっと考えた後、ニコッと笑う。
「まぁ、大丈夫じゃない?ニアも楽しそうだし、アルスの人見知り克服のためにもたくさん話した方がいいよ」
【そうか?…まぁ、ラーシャ達がいいならいいが…】
ルーキスは呆れながら、首を傾げるがオルフェもエルも楽しそうに二人の会話を見守っている様なので、それ以上何も言わずに成り行きを見守る事にして大好物の苺を頬張った。
一週間、休載してすみませんでした。
本日より、体調と相談しながら投稿します。
これからもよろしくお願いします。




