一息
ラーシャ達はゼンが見えなくなるまで、見送ると顔を見合わせる。
「突然来てしまってすみません…。やっぱり迷惑でしたよね?」
申し訳なさそうな顔をするアルスにラーシャは首を横に振る。
「そんな事ない。本当に会えて嬉しい。もちろんオルフェもね」
ラーシャの言葉にオルフェも嬉しそうに頷いた。
【ずっと、アルスとオルフェはどうしたか心配してたんだぞ?元気にしてたのか?】
「ご心配おかけしました。元気にしてましたよ。ラーシャ達はどうですか?」
「元気だったよ。…まぁ、色々あったけどね。とにかく中に入ってよ。お茶入れるからさ。っと、その前に…」
ラーシャはそう言って、ルーキスが汲んで来てくれた水で素早く顔を洗ってから扉を開くとアルスに中に入るように促した。
「お邪魔します…」
「はーい。そこ座って」
ラーシャは、すぐにお茶菓子のクッキーを出すとお湯を沸かし始める。
ニアに前に貰った珈琲もあるが、ここはお茶でいいだろう。
シューリカは美味しいと言っていたが、ニアには申し訳ないが全然美味しさがわからない。
「何か手伝う事ありますか?」
席に着くアルスに申し訳なさそうな顔をして、声を掛けられラーシャは笑顔でその申し出を断る。
「大丈夫、大丈夫。お客さんなんだから、ゆっくりしてて」
ラーシャはそう言って、お湯が沸き、シュンシュンと湯気が出るヤカンを火から離すとティーポットにお湯を注ぐ。
「それにもうすぐ終わるから…っと」
ティーポットとカップをトレーに乗せると、ラーシャは危なっかしい足取りでお茶を運ぶ。
「お待たせー」
なんとか無事に運べたことに、内心安堵しながらラーシャはお茶の入ったカップをアルスの前に置く。
「ありがとうございます」
「どういたしまして。…ごめん、朝ごはん食べてもいい?起きたばっかりで何も食べてないんだ」
「どうぞどうぞ!私たちはもう食べて来たので、遠慮しないで下さいっ!」
「ありがとう」
ラーシャはシューリカが用意してくれたサンドイッチを堂々とテーブルに出す。
肉がみっちみちに挟まれたサンドイッチをルーキスに渡し、自分はトマトとレタスが挟まれた方のサンドイッチを頬張る。
「美味しい…!」
うっとりしながら食べるラーシャにアルスはクスッと笑って、お茶を一口飲む。
「お茶も美味しいです。…オルフェ、クッキー頂きますか?」
アルスに差し出されたクッキーを受け取ると、オルフェはラーシャに一度、ペコっと頭を下げてからクッキーをサクサク食べ出した。
そんなオルフェを見て、ルーキスは呆れたようにため息をつく。




