存在しない者
「そう、見えますか?」
戸惑ったように尋ねるフォルテにリズベルトは頷く。
「二年近く、君達と一緒にいたけど、あれは家族に対する態度じゃない。…虐待だよ。屋敷の人間全てがフォルテの事をいない者のように扱うのはどう考えたって虐待だ」
リズベルトは憐れんだ目で、フォルテにそう言って手を差し伸べた。
「フォルテは何もしてない、何も悪くない。それなのにこんな扱いは理不尽だ。誰も助けてくれないなら、女神様の存在を信じて滅亡を望んだ方が救いになるんじゃないかな?」
フォルテは差し出された手を見て、肩を竦めた。
「俺の努力が足りてないだけなんだと思います。…弟は優秀だから、余計に劣って見えるんでしょう。だからもっと精進して家族だと認めてもらえるように努力します」
神の力など必要ないとばかりに、言い切るフォルテにリズベルトは苦笑する。
「君は本当に強いね…。ま、入信したくなったらいつでも言ってよ。僕達は大歓迎だから」
そう言って諦めたように笑うとリズベルトは、祈りの間から出ていく。
フォルテはため息を吐き、もう一度女神像に視線を向ける。
強い…?自分が?
弱いからあんなクソッタレな家族に必死になってしがみついているというのに。
小さく笑ってフォルテは首を横に振った。
【フォルテ?行かないの?】
不思議そうにラソが尋ねる。
「今行く」
フォルテは短くそう答えて、リズベルトに倣って女神像に頭を下げると祈りの間を後にした。
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「今日の訓練終了だ。…ご苦労」
リライの言葉で、ラーシャ達生徒はその場で崩れ倒れた。
「し、死ぬ…」
ゼーゼーと息を切らしながら、ラーシャの隣に転がっているソルが呟く。
リライの訓練は想像以上にキツいもので、一年以上訓練を受けているにも関わらず、未だに終わる頃にはヘトヘトで、この有様である。
【情け無いのう。これくらいで根を上げるとは】
ベルナデッタが、へたり込むソルの頭の上に降り立ち鼻で笑う。
「いや、マジで、お前もやってみろって死ぬから」
【死んでおらぬでは無いか】
「鬼畜め」
ソルはそう言って、ベルナデッタを羽交い締めにする。
「優しさの欠片も無いやつはこうしてやる…!」
【やめよ!!この糞童め!】
ジタバタと暴れるベルナデッタを、意地でも放そうとしないソルを見てラーシャは苦笑した。
「すっごい元気」
【あのインドア派のソルがここまで体力が付いたのがすごいな】
「本当よね」
ルーキスの言葉にラーシャは感慨深そうに頷く。




