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竜使いのラーシャ  作者: 紅月
勇気と無謀と思惑
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ロベリエの願い

 “種を蒔く者”の支部がある建物の前でロベリエはセツから降りると、すぐに中へと入る。

 建物の警備兼、受付を担う信者の女に頭を下げて進むは、祈りの間。

 この時間はリズベルトによる説教が行われているはず。


 間に合えばいいけど…。


 ロベリエは祈りの間に繋がる扉をそっと、押し開く。

 中では女神像の前で、リズベルトが聖書を片手に信者達に教えを説いていた。

 ロベリエは、静かに扉を閉めると一番後ろの誰も座っていない長椅子に腰を下ろす。

 セツはその膝の上に乗ると、身体を丸めて目を閉じた。

 ロベリエはそんなセツを愛おしそうに撫でてから、目を閉じて両手を組む。

 リズベルトの声が耳に心地よく響き、荒れていた心がスッと楽になったような気がする。


 最近、息が出来なくなるほど胸が苦しくなる時があったり、この世から消えてなくなりたいと思う時がある。

 どんなに努力したって、結果が全く付いてきてくれない。

 最近では、祖父にも出来損ないだと罵られ酷い時では暴力を振るわれる時もある。

 でも、それは仕方ない。

 だって、本当に自分は出来損ないで世界樹の試練に二度も落ちているのだ。

 ゼンに勝てる事はもう無いとわかると、今度は絶対にラーシャに負けるなと毎日毎日言われ続ける。

 祖父の為にも、なんとしてでも彼女に勝ち続けなければならない。

 だから、ラーシャを嫌いになれば、その憎しみでもっと彼女よりも強くあろうと自身のやる気に繋がるのでは無いかと、嫌な奴を演じてみてもラーシャを嫌いになる事はなかった。

 ラーシャはきっと、ロベリエから嫌われてると思っているだろう。

 それでも、ロベリエに優しく接する事をやめようとしない。

 いつだって、自分に寄り添おうと心を尽くしてくれる。

 ラーシャの優しさに触れる度に、自分がいかに矮小で嫌な奴だという事を思い知らされた。

…いっそのこと、嫌いになってくれればいいのに。

 自分を憎んでくれれば、どんなに楽になれるか。


 ギュッと強く手を握りしめ、ロベリエは震えながら息を吐く。


 …疲れた。

 頑張るのも、張り合うのも。もう逃げたい。

でも逃げる事は許されない。

 世界が終わるその日まで、ロベリエはラーシャに勝ち続けるしか無い。

 早く、早く世界が終わって祖父とそして、ロベリエに安寧を与えて欲しい…!


 その時、不意に肩を叩かれロベリエはハッとして目を開く。

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