藪蛇
ラーシャの言葉にベインが目をギョッとさせて、慌てて首を横に振る。
「やめろやめろ!!そんな事したら、俺も残業しなきゃいけなくなるだろ!藪蛇みたいなことしてんじゃねぇよ!」
あまりにも必死に捲し立てるベインに驚いて、目を丸くするラーシャ。
それを見たセルジュが笑いを噛み殺して、なんとか真顔を作る。
笑って説得なんてしたら説得力に欠けてしまうから。
そうして、セルジュは落ち着いたところで口を開いた。
「想像してみろ。ラーシャが残業したら、日勤の先輩騎士方達も、残業をした方がいいのか困惑して帰り難くなるだろ?」
「そ、そうかな…?」
ラーシャの反応に、まだ押しが足りないと判断したセルジュはさらに続ける。
「もし、それで結局みんなで連続勤務なんてしたら、みんなの明日の仕事の質が落ちる。そうしたら、困るのは市民だ」
「た、確かに…」
動揺するラーシャにトドメとばかりにセルジュはさらに畳み掛けた。
「それに、先に帰ったロベリエに明日凄く責められるぞ」
「…」
それが決定打だった。
セルジュの容赦ない三連続攻撃に、ラーシャはぐうの音も出す事が出来ない。
【えげつない】
ルーキスの感想に、ナイラも頷く。
【的を居ているだけあって、反論の余地もねぇですね】
【まぁ、しょうがないよね】
ニクスが苦笑しながら言うその横で、ラーシャは肩をガックリ落とす。
「わかったよ…。今日は大人しく帰る」
【そうした方がいい。それにラーシャは魔力をほぼ使い切ったんだろ?】
余計な事を言うなとばかりにラーシャは慌てて、ルーキスのその口を掴んで黙らせるが時既に遅しで、セルジュは顔を顰めた。
「それなら、尚更残業してる場合じゃないだろ?父さんの稽古も休んだ方が良いんじゃないか?」
口調がちょっと怒っているセルジュに、それ見たことかとばかりにルーキスを睨め付けるが、ルーキスはどこ吹く風である。
ルーキスを恨めしく思いつつ、セルジュの怒りを回避しようと、ラーシャは笑顔を取り繕う。
「大丈夫だよ!もう結構回復したし!それに魔力の消耗が激しいからっていちいち休んでたら、いざって時に動けないじゃない」
騎士になりたての頃の自分とは違うのだ、と胸を張るラーシャにセルジュはため息をつく。
「だからって、あんまり無理するなよ?」
心配そうなセルジュの言葉にラーシャは、コクコクと何度も頷く。
「わかってるよ。大丈夫、無理しない程度に頑張るから!そんなに心配しないで?」
このままでは、セルジュの説教コース真っしぐらだ。何とかして話を逸さなければ…。
ラーシャが頭を悩ませていると、不意に「騎士のお姉さん!」と声を掛けられた。




