前に進むために
「良い相棒だな。お前をよく守ろうとしている。…これからもセルジュを頼む。セナの性格を強く受け継いでいるだろうから、自分を犠牲にしてでも誰かを助けようとするだろうからな」
ニクスは当然とばかりに頷く。
【大丈夫。ボクが全力で守るつもりだからね】
「それは頼もしいな」
そう言って、リライの胸がズキリと痛む。
最愛の相棒だった黒竜のジキルも似たような事を言っていたのを思い出す。
“リライは真っ先に危険事に首を突っ込むからね。ボクが全力で守ってあげるよ”
セルジュの相棒は黒竜では無く、黒い虹霓竜だと聞く。
それでも、色もそして性格もよく似ている。
親子揃って、似ている竜を相棒にするとは。
セナが生きていたなら、きっと笑って“本当に貴方達は似ているわね”と言っているだろう。
自分のせいで失ってしまった、来るはずだった幸せな未来が、今では目を逸らしたくなる程辛い。
だが、もう目を逸らすのも逃げるのもお終いにするのだ。
だから、今日ここに来た。
全てを受け入れて、セルジュと前に進むために。
「父さん」
セルジュに声を掛けられ、リライは我に返る。
「どうした?」
セルジュは少し悩む素振りを見せてから、意を決して口を開いた。
「俺が言うのもおかしいってわかってる。だけど、聞いて欲しい」
真剣なセルジュの言葉にリライは首を傾げつつ、頷く。
「“どんなに後悔したってその後悔は永遠に消えない。誰に何を言われてもその罪の意識は消えない。…だから、君の罪を一緒に背負ってあげる。一人で背負うより、二人の方が気持ちが楽だろう?”ニクスが出会った時に言ってくれたこの言葉が今の俺の支えなんだ」
セルジュは、その時の事を懐かしむように言う。
「…母さんとジキルが死んだ原因は俺だ。誰がなんと言おうと。だけど、父さんも一緒に背負ってくれたら嬉しい」
セルジュの予想もしていなかった言葉にリライは目を見開いた。
「俺とニクスと父さんの三人で罪を分けたら、もっと楽になると思うんだ。一人で背負うよりもずっと」
「ハッ…!」
そう声を漏らすと、リライはバッと勢いよく俯く。
そんなリライを見てセルジュは困惑する。
やっぱり、元凶である自分がこんな事言うなんて、まずかったのかもしれない。
「父さ…「全く」
セルジュの言葉を遮って、そう言ってリライは顔を上げた。
「全く、相変わらず生意気な奴だ」
リライはボロボロと涙を、とめどなく流しながら顔を破顔させた。




