超重要なお使い
「もうちょっと待とうか」
そう言うラーシャに、セルジュは首を傾げる。
「今のベインか?」
「そう!ベインは日勤だったから、お使い頼んだの。それも、超重要なね!!」
ピンッと人差し指を立てて得意げに言うラーシャにさらにセルジュは首を傾げた。
超重要なお使いってなんだ…?
そもそも、何で自分が呼ばれたのかもわからない。
セルジュが困惑していると、視界の端に何かが動いた気配がしてそちらに顔を向けた。
そこに立っている人物を見て、セルジュはハッと息を飲む。
それとは対照的に、ラーシャは顔をパァァァと明るくさせて手を振る。
「ベイン!!お疲れ様!師匠も!!」
ラーシャに声を掛けられた、ベインは疲れきった顔で片手を挙げて応じる。
「マジで疲れた…。師匠昨日と言ってる事が違うんだぜ!?土壇場でやっぱ止めるって…いてっ!」
ベインが文句を言った瞬間、隣にいた全身マントで覆われ顔もフードで隠された人物が頭を引っ叩いた。
彼はどう見ても、一年前にラーシャ達三人を剣の訓練をしてくれたゼンの師匠だ。
そして、彼は…。
「父、さん…」
掠れた声で、囁くようにセルジュが呟いた。
緊張で口が渇いて行くのを感じる。
それは向こうも同じようで、フードの男…リライもベインを引っ叩いてから一度も動こうとしない。
ただ二人とも見つめ合っているだけ。
ラーシャは、セルジュとリライを交互に見ると眉間に皺を寄せた。
ああっ!焦ったい!!!
ラーシャはセルジュの背中を押すと、そのままグイグイとリライの前までセルジュを連れて行く。
「ちょ、ラーシャ…!」
動揺するセルジュに構うことなく、ラーシャはベインの手を取った。
「じゃ、あとは二人で頑張って!!」
笑顔でそう言うとラーシャは、ベインと共に足早にその場を後にした。




