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竜使いのラーシャ  作者: 紅月
過去と挫折と約束
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緊急事態

 赤い塗料はまるで血のようで。

 ラーシャが血塗れの顔で困ったように笑って自分に何か言っている。

 でも内容が頭に入って来ない。何も理解できない。


 ドクドクと心臓が大きく脈打つ。思い出したく無い事がどんどん溢れ出してきて頭がグルグル回り身体が震え出した。


 ラーシャが血塗れで、あの時のアイツのように血塗れになって自分の事を心配そうに見つめてきた。


「どこか痛むの?大丈夫?」


 どこか痛むだって?それは血塗れのお前だろ…!なんで人間はいつも自分よりも竜を大切にするんだ!!

 なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで!!!!!!


【ーーーーーーーーーーーーっ!!!】


 るさ耳をつんざくような咆哮をルーキスが突然上げた。


「ルーキス!?」


 ラーシャがたまらず耳を塞いで名前を呼ぶが、ルーキスの咆哮で掻き消されてしまう。

 ルーキスの身に何が起こったのか理解の出来ないラーシャはどうすればいいのかわからない。

 それは他の者も同じで、もはや試合どころでは無い。みんな驚いてルーキスの方を見て固まっている。

 しばらく咆哮を上げた後、今度は急降下を始めた。


「ちょ、ちょっと!ルーキス!?」


 突然動き出すルーキスにラーシャは驚いてとにかく首にしがみついて叫ぶ。


「落ち着いて!ねぇ!?どうしたの!?言ってくんなきゃわかんないよっ!ルーキス!!」

【うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!!人間なんか嫌いだ!嫌いだああああああああああああああああああああああああああああああああ!!】


 今度は真っ直ぐ急上昇。今までルーキスに乗っていてこんなに早く飛ぶのは初めてで、グッと胸が詰まる感覚にラーシャは咽せた。


「っ…!る、きす…!」


 声にならない声でルーキスを呼ぶが、当然ルーキスにはラーシャの声は全く届かない。



++++++++++++++++



「まずいですわ…あのままではラーシャが気絶してしまいますわね」


 エルとティルティの追いかけっこは一旦中止となり、ルーキスとラーシャを見守っていたニアがポツリと呟いた。

 急上昇しては急降下したかと思えば右左に出鱈目に高速で飛ぶルーキスにニアは危機感を覚える。


【ええ、そうですねぇ…。ニア様と違ってラーシャはスピードに対応しきれるか疑問ですしねぇ】

「とにかく、ルーキスを止めましょう。…ダルテ、先生にこの状況をお伝えしていただけますか?下では異変が起こっているのは気づいてるでしょうがラーシャの身が危険に晒されているかわからないでしょうし」

「わ、わかった」

「ありがとうございます。では、お願いしますね?エル!」

【任せてくださぁぉぁぁぁぁい!!】


 ニアはエルの背中に乗り青いマントをはためかせて颯爽と飛んで行く。その姿はあまりにもカッコよくてダルテの胸を熱く焦がす。


「やべぇ、めっちゃかっこいい…」

【はいはい。あとで感想聞いてあげるから、さっさと先生のところに行くんでしょ】

「あ、ああ!急ぐぞ!」


 ティルティと共にダルテは下へと急ぐ。




+++++++++++


「ソル!」

「セルジュ!」


 呆然と見ていたソルの元にセルジュが駆けつけた。


「一体何があったんだ?」

「俺にも何がなんだか…急にルーキスのやつ固まってその後叫び出して…」

【フラッシュバックだ】


 ニクスの言葉にベルナデッタも頷いた。


【そのようだの。何か隠しているとは思っておったが、ついに耐えられなくなりおったか】

「どう言う事だよ?」

【考えてもみよ、余達は幾千年も生きる。あまりにも長い時間を生きるのだ。その長い時間の中で取り乱すほどのトラウマなど1つや2つ珍しいとことではあるまい?】

【今のルーキスはトラウマのせいで我を忘れてる。とにかく落ち着かせないと。…手のかかる弟だ】


 そう言ってニクスはセルジュに伺うように視線を送れば、セルジュは黙って頷いた。


【ベルナデッタ達はここで待ってて!何があるかわからないから】

【不測の事態が起きた時は任せよ】

「気をつけろよ!」

「任せて」


 セルジュとニクスを見送ったソル達は何が起こってもいいように固唾を飲んでルーキス達を見守る。

 ニクスより先にエルがルーキスに辿り着いたようで接近しては危なくなると距離を取るを繰り返していた。


「気をつけろよ…」


 あそこに行ったとしても自分が足手纏いになるのは容易に想像がつく。

 それでも何も出来ないことに歯痒さを感じながらソルは不測の事態が起こらないことを願う。

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