演説
リーツェのその一言で謁見の間の空気が凍り付く。
だが、リズベルトはすぐに笑みを作ると口を開いた。
「くだらない…ですか…」
「ああ、くだらないな。世界の終わりを望むなど実にくだらない」
リーツェの歯に衣着せぬ物言いにリズベルトは肩を竦めさせた。
「酷い事を言いますね」
「世界の終わりを望む方が酷いとは思わないのか?」
「そうでしょうか?この世界の生きとし生けるもの全てが平等に滅ぶのです。貧しい者も裕福な者も、不幸者も幸せ者全て、平等に!とても素敵だと思いませんか?」
両手を広げて、まるで歌うように演説するリズベルトに、ベルは薄寒いものを感じた。
“種を蒔く者”の信者達は全員、本気でそんな事を考えているのだろうか…?
そもそも大切な人達が生きる、この世界の破滅を願うだなんてどうかしている。
リーツェも眉間に皺を寄せて首を横に振った。
「あたしはそう思わない。生きているからこそ、喜びも悲しみもある。それを無に帰す事は許される事じゃ無い。…それに世界は終わらない。何があっても」
「終わりますよ」
さっきまで浮かべていた笑みを消し去り、リズベルトは真っ直ぐリーツェを射抜く。
その鋭い眼光を前にしても、リーツェはたじろぐ事無く、ただ真っ直ぐに見つめ返すとニッと笑う。
「大した自信だな」
「もちろん。僕には救世の神が味方をしてくれているんですよ」
リズベルトはそう言って意味ありげにラソにチラッと視線を送る。
それに気づいたリーツェは、ラソを彼の視界から隠すように抱き直す。
「変な気を起こさない方がいい。各国の王達も“種を蒔く者”に目を付けている。そのまま叩き潰されるぞ」
「それは残念です。ですが、同じ考えを持つ同志は大勢います。きっと命懸けで皆さん戦うでしょう」
「…関係のない者達まで巻き込むな」
「…」
リーツェの言葉にリズベルトは微笑むだけでそれ以上は何も言わない。
やがて、リーツェは諦めたようにため息をついた。
「話は以上だ。下がるがいい」
「では、最後に一つだけ」
リズベルトはそう言って、一歩前に出る。




