師匠
呆然とライゼの言葉を聞いていたゼンは、ややあってからゆっくりと息を吐き出した。
「…だから、親父は急に師匠に道場をやらないかって声を掛けたのか」
「まぁね。少しでも国民が強くなって、生き残れたらって」
「なるほどな…」
ゼンは頷いた後、頭をワシャワシャと掻き毟ると、低い唸り声を出す。
「え、ゼン?大丈夫??」
ゼンの奇行に不安を覚えたライゼが恐る恐る声を掛ける。
「全っ然、大丈夫じゃない!!情報が多すぎてキャパオーバーだ!馬鹿野郎!!」
「な!?パパに向かって馬鹿野郎だなんて!言葉が悪いよ!」
驚いた後、すぐに反論するライゼを見てゼンは吹き出して笑い出す。
「ちょっと!こっちは真面目に怒ってるんだよ!?」
「わ、悪い…!つい、可笑しくて…!!!」
しばらく笑って落ち着くと、ゼンは深呼吸をして自分と同じ青い瞳を見つめ返した。
「で、俺はどんな訓練すればいいんだ?アドバイスしてくれよ。親父だって俺の師匠なんだからな」
ゼンの言葉にちょっと驚いた後、ライゼは嬉しそうに笑った。
「もちろん。可愛い息子の為だからね」
ゼンは少し照れ臭そうに鼻を擦った後に、真剣な顔をになりライゼに詰め寄る。
「後、セイラにアイシャの鱗を使った装飾品渡すの許可しろよ」
「えー、どうしようかな?」
ニッコニコで悩む素振りを見せるライゼに銃口を突きつけると、ゼンは笑みを浮かべた。
「殺す…!」
表情とは裏腹にドスの効いた声を出すゼンにライゼは慌てて首を横に振る。
「嘘嘘!!そんな怖い顔で見ないで!!」
「どうせ、反対するつもりなんか無いんだろ?最初から許可すればいいじゃん」
許可を出してもらった事によって、表情を和らげてゼンがそう言うとライゼがちょっと不貞腐れたような顔をする。
「素直にいいよって言ったらつまらないでしょ?」
そう言ってライゼはこれ以上ゼンに怒られる前に今度は、近くでアイシャたちの様子を見守り続けているラーシャの元へと近寄る。
「ラーシャ」
ライゼに声を掛けられたラーシャは、少し表情を硬くして振り返った。
「…どうしたの?」
不安そうなその声にライゼは苦笑する。
「夕飯までもう少し掛かるだろうから、空の散歩しようか。グラキエはアイシャと喧嘩してるからルーキスの背に乗せて欲しいな」
ライゼの提案に、ラーシャとルーキスは顔を見合わせた後、頷く。
「いいよ」
ラーシャが快諾してくれた事に、ライゼは顔な表情をパァァァッと明るくした。




