竜同士の喧嘩
まるで子供が駄々を捏ねるように暴れるアイシャを見てラーシャは顔を引き攣らせる。
「げ、元気そうでよかった…」
【竜ならあれくらいの高さから落ちても問題ない】
「それでも痛いでしょ…」
ラーシャとルーキスがそんな会話をしていると、ゼンも目を覚ましたようでアイシャの手の 中から抜け出そうと動き出す。
それに気付いたアイシャが暴れるのをピタリとやめた。
【ゼン!?大丈夫!!?】
「あいたた…。大丈夫だ。アイシャは大丈夫か?」
ゼンがアイシャの顔を覗き込んで聞くと、アイシャは目に涙をいっぱいに溜めた。
【大丈夫じゃないっ!!!悔しい!!!!】
「うわっと!落ち着けって!」
再び悔しさにのたうち回るアイシャをゼンが必死に宥めていると、ライゼとグラキエが近寄ってきた。
それに気付いたアイシャが、立ち上がるとキッとグラキエを睨みつける。
【ゼンを囮に使うなんて卑怯じゃない!!!】
【勝負に卑怯もクソもあるか!首に噛みつきやがって、お陰で俺の大切な鱗が剥がれ落ちただろ!】
【あんたの鱗なんてどうでもいい!!あー!悔しい!!堂々と戦いなさいよ!】
キャンキャン、キーキーと鳴きながら喧嘩を始めるアイシャとグラキエの声にゼンは堪らず耳を塞ぐと、慌てて手の中から逃げ出して距離を取る。
身体を大きくした状態の竜同士の喧嘩は鼓膜が破れそうで、近くで聞いてなどいられない。
【お前がそんなに言うなら、今から二回戦始めるか!?】
グラキエの言葉にアイシャも鼻息を荒げながら頷く。
【やってやろうじゃない!!!どうせ、あんたが尻尾巻いて逃げるのがオチよ!】
【今のうちに言ってろ!】
アイシャとグラキエは火花を散らしながら、飛び立つと再び空の上で戦闘を始まる。
ただし、今回は互いのパートナーを背に乗せていないので先程の戦闘の比にならないくらい激しい。
「え、あれ大丈夫?」
【問題無い。竜ならあれくらい普通だ】
「えー…」
ラーシャはルーキスの言葉にドン引きしながらも、アイシャ達の戦闘を見守ることにした。
ゼンとライゼの戦闘もそうだったが、今のラーシャとルーキスの今の実力では二人の足元にも及ばない。
だから今は、彼らの戦闘を今後に生かす為にしっかり目に焼き付ける。
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