伝言
【心配してくれてありがとう。…さあ、お帰り。ラーシャやフォルテが君達を待ってるよ】
ニクスが帰るように促すと、はしゃぎ回っていたラソが戻ってきて頷く。
【うん!フォルテが待ってるよね!!早く帰って安心させてあげなきゃ!】
そう言ってラソはニクスに抱きついた。
【ニクスお兄ちゃん、ありがとう!!】
【どういたしまして。無理しないようにね】
【うん!】
ラソが離れて、ニスクはルーキスを見ると両手を広げた。
【ルーキスも抱っこする?】
【しない!!】
即答され、ニクスは肩を竦めた。
【冷たいな…】
【オレはもう子供じゃないんだ。…っと、そうだ、セルジュに伝言を頼む】
【伝言?】
不思議そうに首を傾げるニクスに、ルーキスはニヤリと意地悪そうな笑みを浮かべる。
【今日、実はラーシャはソルとデートしたんだ】
【うぇ!?本当に!?】
目をギョッとさせるニクスを尻目に、ルーキスはラソに同意を求める。
【ラソもデート先でラーシャ達に会ったよな?】
【でぇと?がよくわかんないけど、会ったよ!!…ボク達が行っ時には険あ…んぐっ!!】
“険悪”と言いかける口をルーキスが慌てて塞ぐ。
そんな余計な情報はいらないのだ。
今はただ、セルジュに危機感さえ与えられればそれでいい。
口をあんぐり開けたニクスを見られて満足したルーキスは、また一ヶ月後に、と言って飛び去る。
【えー!ちょっと!!デートの話もう少し聞かせてよ!!!】
【じゃまたね!】
ラソは手をブンブン振ると、急いでルーキスの後を追って飛んでいく。
【えー…】
一人残されたニクスは、途方に暮れたような表情をしてルーキスとラソの姿が見えなくなるまでずっと見送り続けた。
その後、第十騎士団の宿舎に戻ったニクスは深夜にも関わらず、ずっと帰りを待っていてくれたセルジュにルーキスの伝言を伝えた。
すると、いつもは冷静なセルジュも椅子から転げ落ち、かなりの動揺を見せていたが、すぐに落ち着きを取り戻すと、ペンを持ちだしてソルに長い手紙を書く。
内容はラーシャと何故デートに行く事になったのか、そのデートはどんな感じだったかという質問…というよりかは、尋問に近いものだった。
後日、ルーキスがベルナデッタから聞いた話では、その手紙を読んだソルは震え上がっていたという…。




