可愛い弟
ルーキスはラソを連れ立ってスノウコルドを目指していた。
【お兄ちゃん!だんだん雪が見えてきたね!】
背後から無邪気なラソの笑い声が聞こえ、ルーキスは笑って頷く。
【そうだな。ラソはスノウコルドは久しぶりか?】
ルーキスの質問にラソはちょっと考えてから頷く。
【フォルテとは来たことないし、千年以上前かも】
【…そうか】
表情を曇らせて、ルーキスはラソが後ろで良かったと切に思う。
もし、今の表情をラソが見ていたらきっと落ち込むだろうから。
それにしても、よくフォルテがラソを連れ出す事に同意してくれたと思う。
絶対拒否すると思っていたのに、事情を説明したら渋りながらも了承してくれた。
フォルテもきっと、ラソの異変に気づいているのだ。
今ならまだ何とかなる。
その為には、兄であるニクスの協力が不可欠だ。
【ふふ、ニクスお兄ちゃんボクたちが急に来たらびっくりするかな?】
まるで悪戯っ子のように笑ってラソが言う。
純粋無垢で可愛い弟に、これ以上傷付いてほしくないと、心から願っているとハッとする。
【どうやら、ニクスもオレ達が来た事に気づいてこっちに向かってるようだ】
【本当?いいなぁー、お兄ちゃん達はボクと違って居場所がわかるんだもん。ボクもお兄ちゃん達がどこにいるのか、わかるようになればいいのに…】
【練習すればお前もわかるようになる】
【んんー、頑張る…】
素直に頷くラソにルーキスは苦笑した。
【でも、わかるようになった所で相棒と離れてまで、会いに来るような事もあまり無いけどな】
【そんな事ないよ!お兄ちゃん達が近くにいるってわかるだけで、ボク嬉しいもん】
【…そうか。お前は本当にオレ達が好きだな】
ルーキスの言葉にラソは満面の笑みで頷いた。
【うん!大好きだよ!!!】
【…】
ルーキスは無言で速度を緩めると、ラソの隣に来るとギュッと抱きしめた。
【えー!何々?お兄ちゃん?どうしたの??ふふ、飛び辛いよー!】
【少しだけだ】
くすぐったそうに笑うラソにルーキスは優しくそう言って抱きしめる。
【二人仲良さそうでいいなぁ、ボクも仲間に入れて欲しいんだけど】




