理由
「知ってる…っていうか、今日会ったよ。リズベルトって人。…豊穣の月を営んでるって言ってた」
そして、決して感じのいい人ではなかった。と心の中で付け加えておく。
「えっ!?会ったのですか!?今日!!!?」
ラーシャの言葉が予想外だったらしく、思わず叫び声を上げるニアは慌てて自分の口を塞いだ後、少し顔を赤くして咳払いをした。
「そ、そうなのですね」
「うん。ソルと一緒に船を見てたら声を掛けられて…」
その時の事を思い出して、げんなりするラーシャを見て何かを察したニアはニコッと笑う。
「その話、後で聞かせて下さいませね」
「もちろん。…ていうか、ニアの笑顔すごい怖いよ?」
ニアの笑みに薄寒いものを感じたラーシャが顔を引き攣らせた。
「ふふ、今の私にとって豊穣の月は憎き敵なのですわ。そんな輩が私の大切な友人達に何かしたのなら放って置けませんわ」
その言葉にラーシャは怪訝な顔をして首を傾げる。
「憎き敵…?ニアも何かされたの?」
「何かされたわけではありません。ただ…」
「ただ?」
「…」
さっきまでの威勢はすっかり消え去り、ニアは黙り込む。
【ニア様がロアンとの婚約を拒否できない理由が豊穣の月なのですよ…】
ニアの変わりにエルが答えると、盛大なため息をついた
【エルが代わってあげられるのなら、エルが代わりにロアンと結婚するのですけどねぇ】
「多分、出来たとしてもロアンが嫌がりますわ…」
そう言って苦笑するニアを見て、ラーシャふとある事を思い出した。
「もしかして、断れない理由って玉葉と豊穣の月が提携したから…?」




