人の話を聞いてくれない
「スノウコルド!?今から!?」
そう叫んでから、ラーシャはちょっと考えてため息をついた。
ルーキスが何も考えないで突然そんな事は言わないし、スノウコルドは彼の兄であるニクスもいる。
きっとラソの事で何か思うところがあるのだろう。
「うーん、ルーキスは聞いても教えてくれないしな。…わかった、気をつけて行ってきてね。夜だから力が弱まってるの忘れないでよ?…それから、私たちは明日は準夜勤だから、自分が寝る時間も考えてちゃんと早く帰って来るのよ?」
ラーシャの言葉が予想外だったのか、驚いた後、ルーキスはラーシャに礼を言った後エルの方を向いて頭を下げた。
【エルにならラーシャを任せられる。悪いが頼む】
【ええ、ええ、構いませんよ!!エルにドーンっとお任せください!!!】
胸を張ってそう言うエルにルーキスは苦笑する。
【ありがとう。…じゃあ行ってくる】
ルーキスはラーシャにそう言って、夜の空へと飛び去って行った。
ルーキスを見送ってからラーシャはニアとエルの方を見る。
「…ごめん、自分から誘っておいて申し訳ないんだけどルーキスがいないから乗せて行って」
申し訳なそうに頭を下げるラーシャにニアは涙を拭うと、笑って頷いた。
「もちろんですわ。…では、参りましょう。エル」
【お任せください!!】
エルは嬉々として身体を大きくすると、早速二人を乗せて空へと舞い上がる。
【さぁ、夜は限られてますからねぇ!フルスピードで参りましょう!!!】
エルのその言葉にラーシャはサァッと顔を青ざめさせた。
エルのフルスピードはヤバい。死ぬ。
「ちょ、フルスピードはちょっと…」
「ええ!お願いしますわっ!」
「お願い、待って…」
【いっきますよぉぉぉぉっ!!】
「話聞いて…!ヒッ!!」
ラーシャの話は一切聞いてもらえる事なくエルはフルスピードで飲食街へと向かって行く。
そんな、ラーシャ達を窓から悲しそうにライゼが見送っていた。
「悲しい。…小さい頃はパパとずっと一緒にいるって言ってたのに…今は平気でパパを置いて遊びに行っちゃうなんて…悲しい…」
「それだけ、ラーシャも成長したのよ。早く子離れしなさい」
シャノンが苦笑して、窓際でシクシク泣き出すライゼの肩を叩いた。
「やだやだ、ゼンとラーシャにはいつまでも子供でいてほしい!!パパを一生必要として欲しい…っ!!!」
ついに駄々を捏ね始めたライゼにグラキエが呆れたようにため息をつく。
【お前、そのうち本当に子供に愛想尽かされるからな】
「酷い…」
【グラキエ、ライゼ放って置いてご飯食べよう】
アビーの提案に同意して、グラキエもライゼを放置して席に着いた。
みんなに見捨てられ、ライゼは声を上げて泣いたが慰めてくれる人は誰一人いなかった。




