危機感
リズベルトは両手を上げて困ったように笑う。
「何だかすごく怒ってるみたい。ごめんごめん、今日のところは大人しく帰るよ。…行こうか、フォルテ、ラソ」
リズベルトは今度こそ、フォルテを伴ってその場を後にする。
その際、リズベルトがチラッとラーシャ達の方を見て笑ったのをラーシャは見逃さなかった。
その笑みはどこか暗く恐ろしく見えて、ラーシャは身体を震わせた。
リズベルト達をしばらく見送った後、ソルとラーシャは顔を見合わせると、二人同時に重いため息をついた。
「何だったんだ、アイツ?」
「さあ?」
リズベルト達のせいで疲れがどっと押し寄せてくる気がした。
「ベルナデッタ、大丈夫か?」
ソルがベルナデッタを気遣うように声を掛けると、ずっとリズベルト達の方を睨みつけていたベルナデッタがキッと振り向いた。
【大丈夫などでは無いわっ!お前はもっと危機感を持て愚か者!!】
そのあまりの形相にソルは思わず後ずさる。
「わ、悪かったって!!!そんな怒るなよっ!ただ手が触れそうになっただけだろ!?」
【“触れそうになっただけ”だと…!?阿呆な事を抜かしおって…!】
「ひぃぃぃっ!!」
口の中から火を噴きそうな勢いで唸るベルナデッタにいよいよ、命の危機を感じているとルーキスが間に割って止めた。
【ベルナデッタ、落ち着け。…まぁ、気持ちはわかるが…】
「どういう事?」
ルーキスの含みのある言葉にラーシャが首を傾げた。
【リズベルトって奴、ソルに能力を使おうとしていた】
ラーシャとソルはギョッと目を見開く。
「そ、それってなんの能力を使おうとしたの?」
【知らぬ。大体、己の理想を他人に押し付けようとする奴に碌な奴はおらぬ】
ベルナデッタは腹立たしそうに鼻を鳴らす。
【よいか?あの、リスペクトっていう童には絶対関わらぬようにな。何をされるかわかったものではないからの】
ベルナデッタに念を押され、ソルが顔を真っ青にさせて頷くとラーシャが不意に口を開いた。
「フォルテとラソは大丈夫なのかな?」
ラーシャが心配そうに、フォルテ達が去っていった方を見つめる。
「何が?」
「だって、そんなに危険ならずっとリズベルトさんといるフォルテとラソだって危ないんじゃない?」
「あ、そうか…」
「なんかすごく嫌な予感するんだよね」
ラーシャはそう言って顔を曇らせる。
ルーキスも表情が暗く、ソルとベルナデッタは顔を見合わせた。




