種を
「では、そろそろ行きましょう」
もうこれ以上、話す事はないとばかりにフォルテはそう言い放つと、リズベルトも頷いた。
「そうだね」
【お兄ちゃん、ベルナデッタ、またね!!】
小さな手を一生懸命振ると、ルーキスとベルナデッタもそれに答えて手を振ってくれてラソは満足そうに笑った。
ルーキスも笑っているが、やはりどこか引き攣っているように感じる。
「あ、そうだ!」
フォルテと共に歩き出したリズベルトが思い出したよう言うと、ちょっと待ってて、とフォルテに言ってラーシャ達の元へ駆け寄って来た。
身構えるラーシャ達に構う事なく、リズベルトは小さな紙を懐から出すとラーシャとソル、それぞに渡した。
「…豊穣の月?」
読み上げるラーシャにリズベルトは得意満面に頷いた。
「そう。僕は豊穣の月っていう貿易商を営んでいるだ。玉葉と提携する事になったからしばらくジルジを拠点にするんだ。よろしくね」
ジルジを拠点にするって事は今後も会うかもしれないと、ソルはあからさまに嫌そうな顔をして紙を見ていると、不意に視線を感じて顔を上げるとリズベルトと目が合う。
「えっと…」
物凄く嫌そうな顔をしていたのがバレたのだろうかと、少し不安そうな表情をするソルにリズベルトはソルの持っている紙をある場所を指差す。
「種を蒔く者…?」
「そう。世界を導いてくれる神様を信仰しているんだ。…君は悩みが多そうだからいつでも相談に乗ってあげるよ。あ、そうだ。君が一人で道に迷わないように、今ここで種を蒔いてあげようか?」
そう言って、リズベルトは紙を差していた指をスッと動かしてソルの手に触れようとした、次の瞬間。
「あっつ!!」
「!?」
持っていた紙が燃え出し、慌ててソルは紙を投げ捨て、リズベルトも顔を顰めさせて後ろに下がる。
そんな二人の間を隔てるようにベルナデッタが現れた。
「ベルナデッタ!!いきなり燃やすなよ!俺の手が燃えるだろっ!!」
【戯け!!黙っていろ!!】
ベルナデッタに一喝され、ソルは出かかっていた言葉を飲み込んで黙る。
ベルナデッタが物凄く怒っているのが、よくわかる。
【貴様、ソルに変な事をしてみろ…!その身体消し炭にしてやろうぞ!!!】




