芸術的
自分の目でそんな物があるのなら見てみたいが、それは叶わない。
竜の国の民は竜使い以外は国外に出る事を禁じられているからだ。
ソルは少し寂しそうな笑みを浮かべて、ラーシャに向き直る。
「じゃあ、ラーシャが竜使いになって実際に蒸気機関車とか珍しい乗り物を見たらさ、絵にでも描いて俺にどんなんだったか教えてくれよ」
ラーシャはちょっと驚いた後すぐに頷いた。
「もちろん。任せてよ!!」
ラーシャはドンっと得意げに胸を叩いた。
【じゃあ、ラーシャは竜使いになる前に絵の勉強もしないとな?】
ルーキスが揶揄うように言うとラーシャは頬を膨らませる。
「それどういう意味よ!」
【そういえば、ラーシャの絵は独創的であったな】
ベルナデッタもラーシャの絵を思い出したのかクスクス笑い出す。
「失礼な!!芸術的って言って!」
「確かに…芸術的…ではあるな?」
「ソルまで馬鹿にして!!確かにソルの足元にも及ばないけど…!」
ラーシャは顔を真っ赤にさせて怒る。
確かにシューリカやゼンに彼等の似顔絵を見せても“これは食人花の絵?”って聞き返されるが良く見てもらえば自分達に似てるって言ってもらえる。
そこまで酷くない。…はずだ。
ぐぬぬ、と言葉を詰まらせているその時…。
「興味深い話してるね」
突然背後から声を掛けられ、二人は驚いて振り返るとそこには、人懐っこい笑みを浮かべた濃緑色の髪型目を引く男が立っていた。
男の近くに竜がいないことから、竜の国の民でない事がわかる。
観光客か商人なのかはわからないが、着ている服が側から見ても上質そうな物からかなりの身分が高い事が窺えた。
「どうも」
ニコッと笑うその男に警戒心むき出しのルーキスのベルナデッタをなんとか宥めてると、ラーシャ達はぎこちなく頭を下げた。
「急に話しかけてごめんね?びっくりしたよね?面白い話してたから僕も話に混ぜてもらおうかと思って」
「面白い話って、ラーシャの絵が芸術的ってやつか?」
「そんなわけないでしょ…!」
ソルの言葉にムッとしたラーシャが彼の背中を濃緑色の髪の男にバレないように叩く。
濃緑色の髪の男も笑いながら首を横に振った。
「違う違う。その前の話。ほら、蒸気機関車とか話してたでしょ?」
「ええ、話してましたけど…」
おっかなびっくりしながらソルが答える。
「その話が興味深くてね、声を掛けたんだ。…あ、僕の名前はリズベルト。よろしくね」
濃緑色の髪の男…リズベルトは笑みを浮かべた。




