行きたい所
そんなソルに気付かないラーシャは少し残念そうな顔をする。
「そっか…。じゃあ、最後に一箇所だけ行きたいところがあるんだけど、いい?」
「いいけど…行きたい場所?どこだよ?」
不思議そうなソルにラーシャはただ笑うだけで唇に人差し指を当てた。
「内緒。行けばわかるって!!ほら行くよ」
そう言ってラーシャはソルの手を掴むと走り出した。
「あ、おい!急に走るなって!!」
「急がないと日が暮れちゃうでしょ?すぐ近くだから頑張って!」
強引に引っ張るラーシャに、ソルは困ったように笑う。
「まったく…ラーシャには敵わないな」
「え?」
聞き返すラーシャにソルは首を横を振った。
「なんでもない!!前を向いて走らないと危ねぇぞ!」
「はいはい!わかってるってば!」
二人は駐屯所から人混みを駆け抜けて、豪華客船や貿易船が停まっている港までやって来た。
「近くで見ると想像以上に大きい…!」
ラーシャは豪華客船の真下まで来ると船を見上げて、感嘆のため息をつく。
「こんな大きな船が船に浮かぶんだから不思議だよな。どういう作りなんだろうな?」
ソルも興味深げに船を見上げる。
「ラーシャが見たかったのは船なのか?」
「そうよ!パパからね、異国で見て来た乗り物の話を聞いてたから船を見てみたくなって。テヘラに行った時はそんな余裕なかったから」
ラーシャの言葉にルーキスも頷いた。
【そうだな。…オレはライゼから乗り物の話を聞くまで全く興味は無かったけどな】
【余も興味など湧かぬな。船とやらに乗らなくても海を渡れるしの】
ベルナデッタは退屈そうに言って、ソルの頭の上でクアッと欠伸をする。
「竜の国は竜がいてくれるから、乗り物が発達してないけど、他の国はすごい発達してて、レールっていう道が敷かれててその上を鉄で作った蛇みたいな乗り物が走ってるんだって。蒸気機関車って言うらしいんだけど、街と街、国と国を繋いでる重要な交通手段の一つらしいよ」
「へえ…。鉄で出来た蛇みたいな蒸気機関車か…想像つかねぇな」
ソルは一生懸命、想像を巡らせようとするが全く蒸気機関車の想像がつかなかった。




