制圧
「ルーキス、先に行って竜の方を制圧して。人間の方は私がやる。人が多いから相手に力を使わせる前に速やかにね」
【任せろ】
ルーキスはラーシャから離れ、人混みから飛び出すと高度を上げて飛び、彼らを探し始める。
すると、ひったくり犯はすぐに見つかった。
誰彼構わずぶつかりながら走っている姿はかなり目立つ。
その横で頻りに後ろを気にする黄竜を見つけた。
あれが、あの男の相棒か。
ルーキスは黄竜に見つからないように、距離を縮めると黄竜が見ていない隙に人混みの中へと潜り込む。
黄竜に攻撃をする機会を与えてはならない。
こんな所で雷を放れたりなんてしたら死人が出るのは間違い無いだろう。
一瞬で仕留める…!
ルーキスは人の足の間を縫い、ひったくり犯のすぐ下まで来ると飛び上がり黄竜の首に噛み付いた。
【ぐあっ!?】
驚き悲鳴を上げる黄竜に構う事なく、抵抗される前にルーキスはそのまま一気に急上昇する。
【放せっ…!!】
ある程度人から離れた所で、我に返った黄竜が暴れ出すが噛む力は絶対に弱めずにさらに上昇を続ける。
【…っ!!クソが!だったら…!】
黄竜はそう言うが否や身体を元のサイズに戻して、ルーキスを振り払う。
ルーキスは口を離すとすぐに自分も元の大きさに戻し、自分の上を飛ぶ黄竜を睨む。
【相棒が罪を犯さないよう止めるのが俺達の役目だろう!!何故止めない!?】
ルーキスの言葉に黄竜はハッと鼻で笑う。
【お前は随分正義感の強い奴と契約してるみたいだな!?だがな、そんな綺麗事を言ってるだけじゃあ生きていけない奴だっているんだよぉぉぉぉぉっ!!】
怒りに呼応してバチバチ音を鳴らして、電流が黄竜の周りを迸る。
黄竜はいつでも雷撃を放てるようだが、ルーキスは余裕の表情を浮かべた。
【今は昼で光は十分だ。…お前を余裕で一撃で仕留められるな】
【何だと!?ふざけんなぁっ!!やれるもんならやってみろ!!!その前に俺がテメェを黒焦げにしてやる!!!】
雷を出現させて、今度こそ落とそうとする黄竜。
それを見てもルーキスは慌てる事無く口を開いた。
それ同時に真っ白な閃光が口から放たれ、一瞬で黄竜を飲み込む。
すぐに光は収まり、黒焦げになった黄竜が姿を現す。
【ア、ガッ…っ!!】
呻き声を上げて、落下する黄竜をルーキスが掴む。
【安心しろ、命だけは助かるように調整してやったんだ】
そう言ってルーキスはニヤッと笑う。
【まぁ、このままお前を落としてもいいが、罪の無い人が巻き込まれるからな。…あとはラーシャだな】
ルーキスは心配そうに黄竜を掴んだまま下を見つめる。
無理をしなければいいが…。
ルーキスはため息を吐きながら、黄竜を落とさないようしっかり掴み直した。




