お礼
「わぁ…!オルゴールだね」
「あぁ、いい音色だな。こう言うのは観光客向けに受けがいいんだよな」
そう言いながら、重さを確認したりデザインなどをよく見る。
「オルゴール自体は外注で箱の外を、装飾したんだろうな。自分でオルゴール作るの大変そうだもんなぁ…。でも自分にしか作れな物ならオルゴール自体を自作するのにチャレンジするのも…」
ブツブツと呟きながらソルは再び自分の世界へと戻って行く。
これはまだまだ掛かると、ラーシャは確信して棚へと視線を向けるとあるオルゴールが目に止まった。
「あ、コレ…」
虹色に輝く白い貝殻で竜の柄を描いた小さな箱型のオルゴール。
まるでルーキスみたいだと、ラーシャは思い寝ているルーキス達を落とさないよう気をつけながらオルゴールを手に取りネジを回してから箱を開けると優しい音色が鳴り響く。
「いい曲…」
ラーシャはそのオルゴールを何度もネジを回してはその曲を聴き続けた。
それから、どれくらいの時間が経ったのかようやくソルは顔を上げる。
「ふぅ…」
「どう?参考になった?」
「かなり参考になった。やっぱりニアの言う通り、いろんなところに行って見聞を広げなきゃダメだな。ジルジにいるだけじゃ、知らない事も多いな」
ソルは楽しそうにそう言って、土産物を眺める。
「見たことの無い技術やデザインを見てるとやっぱり勉強になる。全部自分の力に出来たらな…!!」
「ソルは努力家だからきっと出来るよ」
「ありがとう。…参考用にちょっとこれ買ってくるな」
断言してくれるラーシャにソルにちょっと照れ臭そうに笑って言うと、ヒョイっとラーシャの持っていたオルゴールを取り上げた。
「あっ!」
ラーシャは驚いて思わず声を上げる。
「これ、気に入ったんだろ?今日のお礼に買ってやるよ」
ソルはラーシャが何か言う前に、会計に向かい二つのオルゴールを購入した。
「ベルナデッタ達抱えてるから、帰りにオルゴール渡すな」
「買ってもらっちゃっていいの?私も楽しんでるのに、逆に悪いな…」
「いいんだって。食べ歩き以外は俺の勉強に付き合わせてんだから、これくらいさせてくれ無いと俺が申し訳ない」
「わかった。そういう事なら素直に貰うね。ありがとう、ソル。大切にする」
「そうしてくれ」
ソルは目を細めて、嬉しそうに笑うラーシャを見つめた。




