任せられる仕事
「え?何々!?私なんか変だった!?」
困惑するラーシャを見てさらに笑うニア。
「ふふ、だって、ラーシャったら、まるでルーキスのお母さんみたいなんですもの」
「え!?」
ニアの言葉にラーシャは顔をカァッと赤くさせた。
「そんなに恥ずかしがる事ないですわ。それだけルーキスが大切だってことが伝わってきますもの」
そうは言っても、恥ずかしい。
今度からあまりルーキスに干渉しない様にしよう。
密かに決心しながら、珈琲を飲めば何となく身も引き締まるような気がした。
「にしても、ニアも遂に仕事を任されるようになったか。…俺も頑張らねぇとな」
ソルがボソッと呟くのを聞いてラーシャが首を傾げる。
「ソルだってもう仕事任されてるんでしょ?」
ラーシャの言葉にニアも何度も首を振って頷く。
「そうですわ。この前だってベインの指輪を作ったって仰っていたではありませんか」
「そーなんだけど、そうじゃなくて…」
ソルはそう言って少し悩んだあと、ため息をついた。
「親父が俺にしか出来ない工芸品を作ることをそろそろ考えた方がいいって言ってきてさ…」
「「ソルにしか出来ない工芸品?」」
ラーシャとニアの声が綺麗に揃う。
ソルにしか出来ない工芸品って一体どんなものなんだろう。
ラーシャは首を捻る。
「それはまた難題だね」
「だろ?…兄貴は将来的には親父の後を継ぐから変に個性を出さずに昔ながらの工程を守っていくのが求められるんだ。でも俺の場合は別で自分だけのオリジナリティを出して工芸品の更なる発展を図るんだってさ。…んなこと言っても何にも思い浮かばねぇんだよなぁ」
そう言って呻くソルを見てラーシャは小さく笑う。
「確かに大変そうだけど、でもソルすごい楽しそうだよ」
「楽しそう?」
キョトンとするソルにラーシャは頷く。
「少なくとも学校のテスト勉強を一緒にやってた頃よりはずっと楽しそうに見える」
「まぁ、そりゃあ…好きな事をやってる事だから。楽しいは楽しい。でもだからこそ、辛い」
頰をポリポリ掻きながら、ソルはポツリと言った。




