寂しさ
セルジュが歩き出すと、ラーシャもその後をノロノロと着いて行く。
黙って廊下を歩き続けて、しばらくするとラーシャが口を開いた。
「セルジュ、ごめん」
突然、ラーシャに謝られてセルジュは驚いて、顔をマジマジと見つめる。
「急にどうした?」
「あのさ、スノウコルドで応援するって言ったじゃない?…今も本気でそう思ってる。でも、素直に応援出来ない自分がいて…」
そう言って暗い顔をするラーシャを見て、セルジュは苦笑した。
「別に無理に応援しろってわけじゃないから、構わない」
「私が構う!!」
ラーシャは真剣な顔をして叫んだ後、ため息をついた。
「セルジュはいつも背中を押してくれるでしょ?だから、本当は私もセルジュの背中を押さなきゃいけないのに。…セルジュが一年間、スノウコルドに行くって思ったらやっぱり寂しい。行って欲しくないって思っちゃう」
「ラーシャ、俺が居なくなって寂しいのか?」
少し驚いたように言うセルジュにラーシャは心外だとばかりに鼻を鳴らした。
「当たり前でしょ!セルジュとは、ずっと一緒にいたんだから!」
ラーシャの言葉にセルジュは少し頬を染めると俯いた。
「そっか…」
それってもしかして、ラーシャにとって自分は…。
「ソル達と一ヶ月間、会えないだけで寂しかったんだよ?一年なんてもっと寂しいに決まってるじゃない」
ラーシャの言葉に少しだけ、期待してしまった自分にセルジュは内心苦笑した。
ラーシャにとって、セルジュはソルやニアと同じ友達なのだ。
それ以上の何者でもない。
それでも今は、ラーシャが寂しいと言ってくれたことを素直に喜ぼうと思う。
「セルジュ?」
何とも言えない顔をしているセルジュにラーシャは不思議そうに首を傾げた。
「何でもない。俺もラーシャに会えなくて寂しい」
「じゃあ…!」
期待して目を輝かせるラーシャの頭に手を置いて、銀色の髪をクシャッと撫でた。
「それでも俺は、スノウコルドに行ってくるよ。夢の為に」
「…そっか」
ラーシャは立ち止まると唇を噛み締めて、涙が滲むのを必死に堪える。
夢の為なら仕方ない。自分も夢の為なら、セルジュと同じことをするって一ヶ月前からそう思ってたのに。
こんな所でみっともなく泣いて別れるのは嫌だ。
「手紙書くから」
「うん」
「まとまった休日が貰えたら帰ってくるから」
「…うん。待ってる…」
「一年なんてあっという間だ」
必死に元気付けてくれようとするセルジュの優しさにラーシャは、思わず笑ってしまう。
「そうだね。あっという間だよね。…気をつけてね。絶対に怪我しないで無事にニクスと帰って来て」
「怪我は…ちょっと約束出来ないかもしれないけど、無事に帰ってくるよ」
「それから、死竜に会ったら絶対逃げてね?戦っちゃダメだからね!」
そう言うラーシャに今度はセルジュが笑う番だった。
「俺はラーシャほど引き寄せ体質じゃないから、死竜には出会わないと思うけどな。…むしろ」
セルジュはラーシャの頰に手を伸ばすと、そっと触れた。
自分を見つめセルジュ目は何処までも真剣そのもので、ラーシャは思わず息を飲む。
「ラーシャの方が心配だ。俺がいない間、変な事に巻き込まれないようにな。無理しないように」
「…大丈夫だよ、多分」
大丈夫だって言い切りたいところだが、スノウコルドで死竜を引き寄せてしまっている為断言できないのが悲しい。
ラーシャは自分の頰に触れているセルジュの手を取った。
「でも、約束する。無理をしない…は出来るかわからないけど、セルジュに会うまで無事に過ごせるように気をつける」
「そうしてくれ。俺も約束するから」
「うん」
二人はそう言って見つめ合うと微笑み合った。




