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竜使いのラーシャ  作者: 紅月
異変と激動と動き出す運命
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言いたい事

 叙任式も無事に終わり、女王がベル達を連れて退出すると広間の空気は一気に緩み騒がしくなる。

 皆、叙任式や初めて見た女王や金竜、銀竜の事を興奮気味に話しながら帰路に着いて行く。

 ラーシャも他の者同様、はしゃぎたいのだが今はそんな気分になれない。

 何故なら…。


「セルジュ!!行こうぜ!!」


 セルジュにそう声を掛けて来たのは、ルシェ。

 そう、セルジュはこの後ルシェ達と共にスノウコルドに帰り、一年間もそこで修行することになっているのだ。

 わかっていたが、一年間会えないのはやはり寂しい。

 本当は笑顔で送り出さなきゃいけないのに、全然笑えない。

 いつも不安な時、さりげなく背中を押してくれるセルジュ。

 今度はラーシャが背中を押す番なのに…。


 ラーシャの暗い顔を見て、ルーキスとニクスは顔を見合わせると頷き合う。


【ラーシャ、ちょっとルーキス借りるね】

「え?」

【しばらく会えないから最後にゆっくり話したいんだ。ね?ルーキス。お兄ちゃんと話したいよね?】


 ニクスにそう言われて、ルーキスは心底嫌そうな顔をした。


【気持ち悪い言い方するなっ!!…ぐっ…でも

まぁ、そうだな…」


 ラーシャの顔を見て、グッと堪えるとルーキスは渋々頷いた。


【ラーシャ、お前もちゃんと言いたい事は言った方がいい。しばらく顔を見て話せないんだからな】


 ルーキスはそれだけ言うと、ニクスを引き連れて広間を後にした。

 キョトンとして、ルーキス達を見送っているとデイルが突然大きな声を上げた。


「あ!そうだ!!忘れてたっ!ベイン、ロベリエ。二人にちょっと話があったんだ。少しいいかな?…って事で僕達は先に行くよ!」


 デイルはそう言って強引にベインとロベリエの腕を引いて広間から連れ出す。


【下手くそな言い訳ですわね!もっとマシな言い訳思いつかなかったのかしら?】


 レイヴは呆れたようにそう言ってデイル達の後を追う。


「ルシェ、俺たちも行くぞ」

「わかった!セルジュ!!早く行こうぜ!親父と二人っきりはつまんないからさ…イテッ!」


 ルシェの頭を引っ叩くと、イヴァンがズルズルとルシェを引き摺って出て行く。


【あんなに親父様に周りに配慮しろって言われてるのに…】


 スティーリアが小言を言いながら、ついて行く。


 二人だけになったラーシャとセルジュは顔を見合わせた。


「なんか気を遣わせちゃったみたいだな」

「そう、だね…」

「じゃあ、みんなの所に行きながら少し話そう」


 セルジュに苦笑しながらそう言われて、ラーシャは頷いた。

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