宣誓
セルジュの横を通る際、目が合うとセルジュがラーシャにまるで大丈夫だ、と言うように頷いてくれた。
それに返事をするようにラーシャも頷く。
まだ緊張しているが、名前を呼ばれた時ほどでは無い。
大丈夫。
ラーシャはリーツェの前に来ると、真っ直ぐリーツェを見つめた。
リーツェに微笑まれ、ラーシャは不思議と心が穏やかになるのを感じた。
ラーシャは息を吐き出してから、スッと跪き首を垂れた。
サラサラと銀色の髪の毛がカーテンのように下がって来て周囲の視界を遮る。
少しして、ルーキスが留まってない方の項に刀身が当てられた。
冷たい刀身に一瞬、身体が震えたが頭が冴え渡るような気がして、ラーシャは息を吸うと目を閉じた。
そして、何度も何度も家で練習した言葉を思い出しながら、口を開く。
「絶対の忠誠を私は捧げます。一生を持って使え、命をかけてこの国を守り、陛下の命に従います。…我が誓いを受け取って頂きたくお願い申し上げます」
他に騎士達が居るとは思えない静寂が広がる広間で、ラーシャの宣誓の声だけが響く。
「うむ」
その言葉と共に項を刀身で軽く叩かれた。
「汝の誠意に期待を込め、これを贈ろう」
リーツェの言葉にラーシャは目を開いて顔を上げ、両手を差し出す。
その両手の上にリーツェはラーシャとルーキスの名が銃床に刻まれた小銃を乗せる。
銃床の末端部分には、スノウコルドを旅立つ前に鱗を渡すように言われて渡したルーキスの新雪を思わせるような白く虹色に輝く鱗が嵌め込まれていた。
これが叙任式じゃなければ、飛び跳ねて喜んでいた所だがグッと堪えて、再び深く首を垂れた。
「身に余る栄光です。…女王陛下の期待に添えるよう、ルーキス共々誠意を持って使えさせていただきます」
ラーシャがそう言って立ち上がると、リーツェが頷いた。
ラーシャは頭を下げてから、リーツェに背を向けて自分の場所に戻る。
ラーシャが戻ると、今度は別の新人騎士が名前を呼ばれた。
そこでようやくラーシャの肩の荷が降りて、ホッと小さくため息を溢す。
うまく出来てよかった、と。




