大好きになっちゃったから
人の話を全く聞かない灰竜に舌打ちをしたいのをグッと堪えて、ため息をついた。このままでは、身の上話をしなければ解放してくれなそうなのでとりあえず話を変えることにした。
「お前には兄貴がいるのか?」
フォルテの質問に灰竜は目を輝かせ、尻尾をフリフリしながら頷く。
【うん!いるよ!白いお兄ちゃんと黒いお兄ちゃんがいるの!ボクお兄ちゃん大好きなんだ】
「…そうか」
昔はフォルテも弟から“大好き”ってよく言われていたが今は全く言われない。言われなくなってどれくらい経つだろう。
【でもねボク、いつもお兄ちゃん達に迷惑かけちゃうんだ。…ボク、お兄ちゃんに言われたことちゃんと守れないから…】
そう言う灰竜の目からはポロポロと大粒の涙から溢れ出してきた。
【いつも取り返しがつかない一歩前まで行っちゃうの…。きっとお兄ちゃん達、ボクのこともう嫌いかも…ふぇぇん!】
とうとう声を上げて大泣きする灰竜にフォルテは嫌そうな顔をする。
「声を上げて泣くんじゃねぇーよ。兄貴に確認したのかよ?」
【…してない】
「だったら泣いてんじゃねぇよ、嫌われてるってわかってから泣けよ」
【うん…】
そう言いながらも灰竜の涙は止まらない。フォルテは頭をガシガシと掻きむしると、ため息をつく。
「うるせぇな…おい、さっきみたいに小さくなれよ」
【な、んで…?】
「いいから、早くしろよ」
涙を拭いながら、灰竜はフォルテの言う通り体を小さくした。初めてあった時のように小さくなった灰竜をフォルテは抱き上げると、小さな子供をあやすように頭を撫でてやる。
「嫌われてるかもしれないって、わからない事を考えて泣いてもしょうがねぇーだろ」
こいつはまだ自分と違って兄弟に嫌われてないかもしれない。それなのにそれを心配して泣くのは馬鹿らしいと思った。
…それから羨ましいとも。
まだ、こいつは家族に好かれてる希望がある。自分には一生望めない希望だ。
【…きみは優しいね】
「別に」
【ねぇ、ボクと契約しよう?】
その言葉に驚いてフォルテは灰竜の顔を覗き込んだ。そして、首を横に振った。
「やめとけ、俺と契約したって何もいい事無いぜ?」
【そんな事無いよ!ボクきみのおかげですごく元気出たもん!!ねぇねぇ、契約しよう!】
泣いてたと思ったら今度はニコニコしながら、尻尾をフリフリして契約を申し出てくる。
本当に表情がコロコロ変わる竜だ。
「…俺は家族に嫌われてる。弟より馬鹿だし、性格だって悪い。お前みたいに純粋なやつが俺と一緒になんかいない方がいい」
【関係ないよ!ボクきみのこと大好きになっちゃった!!】
「…」
フォルテは一瞬、泣きそうな顔をした後グッと唇を噛み締める。
【汝、我を求めるか?】
フォルテは少し迷った後頷いた。
「あぁ、求める。…お前が俺と一緒に生きてもいいと思うなら」
灰竜は無邪気な笑顔を浮かべた。
【汝の名は?】
「フォルテ」
【我の名は?】
フォルテはパッと頭に浮かんできた単語を躊躇して、少し考える。
柄にもないがこれが一番しっくりする気がした。
「ラソ」
【ラソ!ボク今日からラソって名前なんだね!嬉しいなぁ!!フォルテよろしくね!!】
抱きしめられながら子供のように笑って喜ぶラソにフォルテは調子を狂わせられながらも、満更でもなさそうなため息をついた。
「ラソ、とりあえず集合場所に戻るぞ」
【はーい!じゃあボクに乗って!!ビューンって、飛ぶから!!】
ラソを見たらきっとベイル達は驚くだろうな。そんな事を考えながら、フォルテは大きくなったラソの背中に飛び乗った。




