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竜使いのラーシャ  作者: 紅月
再会と覚悟とスノウコルド
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前を向いて

 外に出ると、そこには第二騎士団の受験生一人と騎士団長、グレイルとイヴァン、そしてデイルがいた。

 グレイルの相棒の緑竜の足元に棺が置かれているのが目に入り、ラーシャは唇を噛み締める。


「あ、ラーシャ。合格おめでとう!!!」


 少し離れているところにラーシャ達がいるのに気づいたデイルが朗らかに微笑んで叫ぶ。


「ありがとうございます!」


 お礼を言って、ラーシャはイルゼの手を放して彼女と向き合う。


「ねぇ、イルゼ」

「何?」


 イルゼの涙はすでに止まっていたが、その目は未だに潤んでいる。

 そんな彼女の瞳を真剣な表情で真っ直ぐ見つめた。


「来年、また試験受けなよ」

「え?」

「騎士を諦めたらきっとミラは悲しむから。絶対に夢を諦めないで」


 驚いているイルゼにラーシャはもう一度言った。


「お願い約束して。立ち止まらずに前を向くって」

「ラーシャ…」

「ミラを理由に立ち止まるのは、ミラに対して失礼だと思うから。それに私もミラと約束してるの、夢を叶えるって。だから、イルゼも私と約束して」

「私「間に合った!!!」


 イルゼが口を開こうとした瞬間、ベインが慌てて外に出てきて叫び声を上げて、ミラの棺へと走って行く。

 その後からセルジュ、ロベリエが外へと出て来てラーシャ達に気付いて手を振ってからベインの後を追う。


「…もう行かなきゃね」


 イルゼはそう言って、グレイル達の元へと歩き出す。


「あ、ちょっと待って!!」


 ラーシャもイルゼに慌てて着いて行くが、グレイルの元に着くまでの間、さっきの回答をイルゼが口にする事はなかった。


「イルゼ、もういいのね?」


 イルゼが来たのを確認すると、グレイルが優しく微笑んで言った。

 イルゼが頷いて答えると、グレイルはすぐに出発準備の号令を掛ける。

 竜達が元のサイズに戻り、イルゼ達が乗るのをラーシャ達は少し下がってその様子を見守る。


「ミラさん…さようなら…」

【…ベイン】


 辛そうな顔をするベインの頰にナイラは慰めるように擦り寄る。

 ラーシャもグレイルの緑竜が抱える棺を見て胸が締め付けられた。

 本当だったら、ミラと再会を約束して笑顔でさよならを言えたのに。


「ラーシャ!!」


 ラーシャはその声でハッとして顔を上げると、笑顔でこっちを見るイルゼと目が合った。


「約束するから!私、来年も試験受けて合格する。ミラに胸を張って再会できるように頑張るから!」

「…うん!約束!!」


 二人が約束すると、タイミングを見計らったかのようにグレイルの緑竜が飛び上がった。

 それに続いて、イルゼ達も飛び上がる。


「またね!!」


 イルゼはそう言って、ミラ達と共にテヘラへと帰路に着いた。

 ラーシャ達は竜の影が見えなくなっても、しばらくの間、消えていった空を見続けていた。

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