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竜使いのラーシャ  作者: 紅月
再会と覚悟とスノウコルド
327/833

心からの

「ご協力感謝します」

「協力?…何を協力したんだ?」


 キョトンとしてベインが質問すると、リイトは少し気まずそうな顔をして頰を掻く。


「カッコ悪い話なんだけどさ…」


 リイトがそう言って昨日あった事を話すと、ベインは頷いて不満そうな顔をした。


「ってことは、最初からキルディが原因だって分かってたってことってすよね?」

「ええ、まぁ。…彼ら二人から詳しい話を聞いていましたし、キルディの言動を逐一報告してもらっていましたから」

「だったら、聴取の前に俺たちに言ってくれればいいのに。どんだけ不安だったかわかります?」

 

 ベインの文句にエルドラは肩を竦めた。


「君たちに全てを教えてしまっては意味がありません。聴取の実習なんてなかなか出来る機会はありませんから。当事者同士の言い争いは、演技では到底臨場感は出ませんからね。なので密告しようとしたお二人には口止めさせていただきました。お陰で受験生の皆様はとてもいい勉強になったと思いますよ」

「それにしたって…」

「それにバルギルザからクラウス騎士団長を呼び出して断罪も出来ました。膿出しが成功して女王陛下も喜んでいらっしゃる事でしょう」


 エルドラが満足そうに笑って言うのを見て、ベインは眉間に皺を寄せ、食い下がろうとすると、聴取の間最後までフードを取らなかった人物が近寄ってきた。

エルドラがその人物に深く頭を下げると、片手をあげて挨拶をした後フードを外した。

 綺麗な緑色の肩から少し上の位置で切り揃えられた髪が目を引く女性が姿を現す。

 容姿端麗なその姿にエルドラ以外は、思わず見惚れてしまう。


「初めまして、私はグレイル。テヘラ管轄地の第二騎士団騎士団長よ」

「第二騎士団…!」


 ラーシャは驚いて、優雅に微笑むグレイルを見上げた。

 テヘラって事はミラの故郷だ。ならば、この人は将来ミラの上司になる予定だった人だ。

 ラーシャは一気に表情を暗くした。


「あの、ミラの事本当に「ありがとう」

「え?」


 ラーシャの言葉に被せて、グレイルはお礼を言った。


「ミラを命懸けで救おうとしてくれてありがとう。心から感謝してるわ」

「あの、でも…」


 口籠るラーシャにグレイルは困ったように笑う。


「あの時点でもうミラとシンシアが助からないのは一目瞭然だったわ。それでも戦う事を選んでくれた。感謝してもしきれないわ。…それからごめんなさいね。イルゼの事」


 グレイルはそう言ってため息をついた。

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