想定外
再び、暗闇の中に戻ったラーシャの耳に同時に複数の音が飛び込んで来る。
ガッシャァァァァァァァァァッン!!!
【ああああああああっ!!そんなっ!!キルディ!!】
「な、なんだ!?」
「アイシャ!!!」
ザッバーン!!
それから、一瞬訪れる静寂。
音だけでは何が起きたのかわからない。
ていうか、今“アイシャ”っていわなかった?
ラーシャは恐る恐る目を開き、そして目を丸くした。
すぐ近くまで来ていたキルディはかなり離れたところで水浸しになって横たわっていた。
【キルディ!ああ!大変だわ!!】
床の上で伸びているキルディの元にヴァルリアが慌てて飛び向かい、体を揺するが目を覚さない。
【死なないでキルディ!!目をあけて…!】
【大袈裟な。ただ水で吹っ飛ばされただけでしょう】
ぐるりと目玉を回して呆れたように言うのは、キルディを吹っ飛ばした張本人である青竜。
どう考えてもアイシャだ。
「え?アイシャ…?」
困惑しながら、青竜に呼びかけてみれば青竜はクルッとこちらを向いてパアアアッと笑顔になる。
【ラーシャ!!心配したんだからー!!!怪我ない大丈夫!?】
やっぱりアイシャだった。
「え、なんでここにアイシャが…って事はゼン兄も…!ぐえっ!!」
困惑していると急に力一杯、横から抱きしめられた。これがかなり苦しい。
とりあえず一旦離してもらいたくて、何度も回された腕を叩いて抵抗する。
「し、死ぬから…!死んじゃうから離して!!」
必死にその手から抜け出して、ラーシャは力一杯自分を抱きしめる人物を睨みつけた。
「ゼン兄!!!」
ラーシャに睨まれて、ゼンは嬉しそうに笑った。




