解体
「解体…!?正気か!?」
クラウスの後ろでバルギルザの二人の騎士も顔を真っ青にさせている。
「バルギルザは代々クラウスの一族が騎士団長を勤めてきた。もちろん、中には己の使命を全うした者もいたと思うよ。でも、クラウスやキルディのように将来が約束され傲慢になる者がいるのも事実。だから、今後一切、一族による騎士団長の継承は原則禁止にする。これにより、クラウスによって選抜された騎士団は一度解体する。賄賂を渡したり、悪事に関与した者は全員罰するつもりだから覚悟しておいて」
レトの言葉に騎士が一人前に出ると、震える唇をなんとか動かした。
「合格する為に賄賂を渡したとして…それでもちゃんと仕事に誇りを持ち、騎士として真面目に働いている者も罰するのですか…?」
「そうだよ」
事もなげに頷くレトに騎士はカッと目を見開く。
「バルギルザでは、どんなに優秀でも金を積まなければ、第一試験は合格出来ません」
「おい、やめろって…」
レトに食い下がる騎士を慌てて、もう一人の騎士が止めるがその手を振り払った。
「黙っててくれ!!金を払わないと合格出来ないから払うしか無いじゃないですか!!それなのに全員罰するなんて可笑しいです!じゃあ俺は…俺はどうすればよかったんですか…?」
今にも泣き出してしまいそうな騎士にレトは困ったように首を傾げた。
「他の街の騎士団長に相談すればよかったんじゃないかな?」
「俺たちは他の管轄地区の騎士団長達がどんな人だかわからないんですよ…?それに俺はどの管轄地区も賄賂を渡して合格していると思ってたのに、誰に相談しろって言うんだ…!!」
絞り出すように呻く騎士にレトは小さくため息をつく。
「女王陛下の決定は絶対」
「そんな…あんまりだ…。俺は何年もの間、バルギルザに尽くしてきたのに…」
がっくりと項垂れ、膝をつきそうになる仲間を慌ててもう一人の騎士が受け止めた。
「…イヴァン、バルギルザの者たちを明日の朝まで拘束してほしいんだけど」
「明日の朝まで?」
「そう。明日の朝、受験生も含めたバルギルザの者たちは僕と一緒に帰ってもらう。それまでは逃げないように拘束しておいて」
「…よかろう」
イヴァンは承諾すると、騎士達にクラウス達を拘束させて宿舎の一室に監禁するように命じた。




