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竜使いのラーシャ  作者: 紅月
再会と覚悟とスノウコルド
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変化


 青年の顔を見た瞬間、騎士達が騒つく。


「な、何故ここに…!」


 さっきまで威圧的な態度だったクラウスも狼狽える。

 青年はクラウスの質問に肩を竦めさせた。


「何故って…女王陛下のご命令でね。あぁ、受験生達は僕が誰だかわからないよね」


 そう言ってジルヴァだった青年は胸に手を当てると柔らかく微笑んだ。


「第零騎士団副団長、レト。そして、相棒のフェルム。驚かせてすまなかったね。ここに僕が来ている事をある事件が片付くまで、誰にも気づかれたくなくてエルドラに協力してもらっていたんだ」


 レトが“ね?”と同意を求めればエルドラが頷いた。


「僕の能力スキル変化へんげ。対象は残念な事に一人だけですが、クオリティは保証しますよ。バレないか、バレるかは演者次第ですが」

「僕は完璧だったでしょ?」


 得意げに笑うレトをエルドラはチラッと見たあと、呆れたようにため息をつく。


「コメントは差し控えさせていただきます」

「つれないなぁ」


 レトはそう言って咳払いをすると、再びクラウスと向き合う。


「ジルヴァの姿を借りたのは同じ黒竜を相棒にしてるからさ。エルドラではフェルムと同時に姿を変えられないからね」

「女王陛下は何故、お前をこの地に派遣した?姿まで変えて…」


 先ほどよりも顔色を悪くしてクラウスが質問した。

 レトの姿を目の当たりにした時から嫌な予感しかしない。

 背中にじっとりと汗が滲むのを感じた。


「要件は三つ。一つ目はイヴァン騎士団長からスノウコルドに滞在する橙竜だけでは、雷に打たれた重症患者を治療出来ないと連絡を受けて、治癒の能力スキルを保有する僕が来た。二つ目は死竜の件。次が一番大切なんだけど」


 レトはそう言って笑みをスッと消した。

 クラウスに向けられた視線だったが、隣にいるラーシャでさえ、その視線にも思わず震え上がった。


「三つ目は膿出しだよ。クラウス」

「膿出し…だと…?」

「そう。この国の膿を出すようにと女王陛下が仰せでね。でもその前に…キルディ」


 レトに呼ばれてビクッと肩を震わせて、キルディは顔を上げた。


「わかってると思うけど、クラウス騎士団長の前でもう一度言うね。約束通り我が姉、第零騎士団騎士団長であり、竜の国の騎士団全てを統括するベル騎士団長の名に於いて、キルディを騎士にすることは一切認めない」


 よく通る声で宣言され、キルディは泣き喚くことなくただ膝から崩れ落ちてポロポロと静かに涙を流しながらレトを見つめる。

 キルディの騎士団長になるという夢が潰えた瞬間だった。

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