聴取
「では、聴取を始める。…が、その前にこの場では、一切の偽証は認めない。真実だけを述べよ」
イヴァンがそう言うと、真っ先に席から立ち上がったのはキルディだった。
「もちろんです。偽証などすれば、コルネ先輩にもミラにも竜達にも顔向け出来ませんからね」
キルディは悲しそうに微笑んだ。
そんなキルディを見てベインが小さく舌打ちをする。
「チッ…、どの口が言ってんだっ…!クソっ!」
「落ち着いて、ベイン」
悪態をつくベインをラーシャが小突いて宥めた。
【ラーシャ、すいやせん。ベインはミラにまだ会えてねぇんでさぁ。…キルディの奴がずっと一緒に居たって聞いたもんで、いつも以上に荒れてるんでさぁ】
「いつも荒れてねぇし…!」
ベインは両手を組むと、爪が白くなるほど握りしめる。
「…ベインの気持ちは、痛いほどわかるよ。でも、今は冷静にならないキルディに揚げ足を取られるわ」
「…わかってる」
ベインは深呼吸をして、気持ちを落ち着かさせた。
だが、結局聴取はキルディのペースで進む事となった。
キルディは言葉巧みに、事実と嘘を織り交ぜて証言をして、一緒に逃げた二人には真実だけを語らせる。
そうする事によって、二人に罪悪感を与えず、尚且つ余計なことを言わせないようにしていた。
イヴァンは偽証は認めないと言っていた。
ここで変な嘘をつかせて罪悪感から真実を語られては困るのだ。
キルディはラーシャ達にも反論する隙を与える事なく、喋り続け頭をフル回転させる。
どうしたら、自分に有利に進める事が出来るのか、イヴァン達を味方に引き込むためにはどんな表情をしたらいいのか。
騎士団長である、父から教わった民衆を味方につける方法を最大限に活用していく。
表情、所作、全てに気を使って話を続けた。
そしていよいよ、周りの同情を最大限に引ける時が来た。




