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竜使いのラーシャ  作者: 紅月
再会と覚悟とスノウコルド
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騎士への道



 あまりにも他人事のようなラーシャの言葉にイルゼが顔を歪めて睨みつける。

 ラーシャはその視線から逃げる事なく真っ直ぐ見つめ返した。


「それで気が済むなら、断罪しましょう。…私は一向に構いません」


 そう言って今度はイヴァンの方に視線を向ける。


「真実を明らかにするだけでなく、断罪を」


 意志の強いその瞳を見て、イヴァンは内心ため息を溢す。


「…全く、親子だな。あの時のライザと同じ顔をする」


 旧友と呼ぶべきか、腐れ縁と呼ぶべきか、ラーシャの父親であるライゼに笑ってしまうほど、表情がよく似ていた。


「当事者達がそう望むならそれで良いんじゃないですか?」


 感傷に浸っていると、ジルヴァが軽い口調でそう言ってにこやかに笑うが、目が全く笑っていない。

 イヴァンはため息をついた。


「ならば、そうしよう。責任の所在が明らかになった暁にはスノウコルド第十騎士団騎士団長、イヴァンの名に於いてその者が生涯、騎士になる事は一切認めない」


 イヴァンの宣言に、会議室内は騒つきだした。

 試験の失格だけでは無く、騎士になる道を絶たれると言うことは騎士を夢見る者達にとっては悪夢でしかない。

 それでも、まだ希望はある。

 イヴァンが許さなくても、自分達の所属する騎士団の長がその才能さえ認めてくれればもしかしたら…。


「第零騎士団騎士団長であり、竜の国の騎士団全てを統括するベル騎士団長の名もそこに入れましょう」


 ジルヴァのその一言で、再び会議室は静まり返る。

 騎士団の最高権力者である、ベルが認めないとなれば話はかわってくる。

 そうなれば騎士団に入ることは二度と叶わないだろう。


「いいですよね?イヴァン騎士団長?」

「構わん」

「イルゼ…さん?だったかな?君もこれで満足?」


 ジルヴァの質問にイルゼは首を横に振って否定した。


「…まだ、何か希望が?」


 急に声が低くなったジルヴァにイルゼは身体をビクッと震わせた後、意を決して頷いた。


「ラーシャ…この女はミラと一緒で将来、竜使いになりたいそうです。ミラが叶えられなかったのに、この女が竜使いになるなんて絶対許せません。…竜使いにさせないでください」


 イルゼの要望に今まで無表情だったラーシャも一瞬、反応したがすぐに何事も無かったかのように振る舞う。

 ジルヴァもイヴァンと顔を見合わせた後、頷いて再びイルゼに向かい合うと微笑んだ。

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