拒絶
その場にいる誰もが、ラーシャの話に耳を傾け真剣に聞いてくれた。
「つまり、ラーシャの話では、キルディが言っていることが間違ってるってことですね」
「信じてもらえるかわかりませんが…」
ラーシャは自信なさげに言うとベインも頷く。
「ラーシャが言っていることは間違ってない。…けど、俺とアルスがそれを言ったところで仲間だからって言われて周りには信じてもらえないだろうな」
「そ、そうですね…キルディ様は…いえ、キルディは周り固めが上手ですからね」
アルスの言葉にロベリエがうぇ、と声を出す。
「面倒くさい奴ね」
「とにかく、明日の聴取でさっき話した事を話すしかないだろう」
イヴァンがそう言って話を遮った。
「とりあえず聞きたい事は聞けた。後は明日だ。ノエル、行くぞ」
「あ、はい!」
イヴァンがノエルを連れ立って退出しようとするのを、慌ててラーシャが引き止めた。
「あの!」
「なんだ?」
歩みを止めてラーシャ達の方を見てイヴァンは怪訝そうな顔をする。
「ミラとシンシアに会いたいんですけど…今はどこに?」
ラーシャの言葉にイヴァンとノエルは顔を見合わせた。
「えっと…」
ラーシャが再び質問しようとしたところで、ノエルが困ったような表情をして口を開いた。
「すみません、それはお教えする事は出来ないのです」
「え?」
ラーシャは戸惑ったような表情をして首を傾げた。
「実は、テヘラ出身の受験生達がラーシャ、ベイン、アルスは絶対にミラに近づけて欲しくないと言ってきまして」
予想していなかったその言葉にラーシャは目を丸くする。
「どう、して…?」
「ミラの死因を作った奴に合わせたくないのだろう」
イヴァンのストレートな物言いに、ノエルがその背を叩く。
「団長!!もっと言い方が!!」
「無い、言葉を濁したところで傷つくのは変わらない」
「それは!…そうですけど…」
ノエルが言葉を詰まらせると、イヴァンはため息をついた。
「ジルヴァ、お前も来い」
突然、名前を呼ばれたジルヴァはギョッとしてイヴァンの方を向く。
「え!?僕ですか!?」
「そうだ。行くぞ」
イヴァンはジルヴァの返事も待たずに医務室から出て行き、ノエルは労わるようにラーシャ達の方を向くと、深く頭を下げてからその後を追う。
「…じゃあ、僕も失礼しますね。何かあったら呼んでください。それから」
ジルヴァはそう言ってラーシャ達にニコッと笑いかけた。
「大丈夫ですよ。正しい行いをしていれば竜神様がちゃんと見てくださってますからね」
それだけ言うと、ジルヴァも医務室を後にした。




