偶然は友を呼ぶ
小さい時から子供だけでは絶対に入ってはいけないと言われていた森は、シューリカと何度か一緒に入った事はあった。
シューリカと一緒の時は森が怖いだなんて一ミリも思った事は無かったが、今日は違う。
ガサガサと草むらが動けばドキリとして、首から下げた笛をギュッとか握りしめて恐怖に震え上がる。
ラーシャはしばらく硬直した後、ゆっくり肩の力を抜いた。
「…ふぅ、ただ風で揺れただけか…」
一人の森が正直、こんなに怖いだなんて思いもしなかった。
「大丈夫、大丈夫」
自分を必死に励ましながら森の中を進む。もう、竜が出てきたら恐怖に負けてすぐに契約してしまいそうだ。
これでは、選ぶ余裕なんて無い。その上、全然竜がいない。
「あーあ…。すぐ、竜に会えると思ってたのになぁ…」
とにかく明るい方へ行こう。暗い方はなんか不気味だし、怖い。
やっぱり、二人みたいに竜の棲家まで連れて行って貰えばよかったかな…。なんて弱気なことを考えていると、川のせせらぎが聞こえてきた。
水の近くには青竜がいるかもしれない。ゼンの話を思い出して走り出す。
「貴方の名前はシンシアよ」
草むらを抜けて川に出ると、ちょうど他校の生徒だろう。ラージャが知らない少女が青竜と契約を交わして名前を与えている所だった。彼女は嬉しそうに竜に抱きつくと、ラーシャに気付いてにっこり笑う。
ラーシャも笑い返した。
「契約おめでとう」
「ありがとう。やっと竜と出会えたから契約できてよかったよ」
「やっぱりこの辺にはあんま竜がいない感じ?」
「うーん、私が見た場所が悪かっただけかもしれないけど、シンシアが初めて会った竜かな?」
「そっか…」
この子の方が試験開始時間は早かったはず。それなのにこの竜が初めてあった竜ってことは、この辺には本当に竜はいないのかもしれない。
ラーシャはガックリと肩を落とす。
「だ、大丈夫よ!きっと竜は見つかるよ!…貴女名前は?私はミラ」
「ラーシャ…」
「ラーシャ、まだ明日の夜明けまで時間があるし大丈夫だよ!頑張って」
「ありがとう…」
困ったような顔をした後ミラは花が咲くような笑みを浮かべて元気のないラーシャの手を取った。
「あたし、第二騎士団の管轄するテヘラって街に住んでるんだ!ラーシャはどこに住んでるの?試験終わって落ち着いたら、会おうよ。ラーシャの竜も見せてね」
少し落ち込んでいたラーシャもミラに釣られて笑う。
「私は第八騎士団の管轄するジルジに住んでるの。ジルジからテヘラまでちょっと遠いけど竜ならひとっ飛びで行けるね!絶対に今日竜と契約して、その子と遊びに行くから!」
「うん、楽しみにしてる!じゃあ、頑張ってね!またね!シンシアお願い」
ミラの言葉にシンシアは体を低くして、背中に乗せてやると空高く舞い上がった。
本来なら、学校で騎乗の講習を受けてから出ないと竜の騎乗は認められていない。だが、今日だけは特別に契約したらスタート地点までの騎乗は認められている。
シンシアとミラを見えなくなるまで、見送るとラーシャは小さくため息をついた。
「竜、見つけられるかな…。でも、ミラと約束しちゃったし…弱気になってる場合じゃない!」
フンス、と鼻から息を吐くと同時にお腹がなる。
竜を求めて結構、森の中を彷徨っていたからかすごくお腹空いた。
近くには座るのにちょうどいい岩もある。
「ちょっとご飯休憩したからまた探そうっと!」
早速岩に座ってシューリカが用意してくれたお昼用のお弁当を開くと、中にはハムやチーズ、玉子のサンドイッチが入っていた。
「美味しそー。いっただきまーす」
口いっぱいにほおばり、一気に平らげて体力を回復する。
「んー、ごちそうさまでした!よし!元気も出たし頑張るぞ!!」
と、立ち上がり意気込んだ瞬間、草むらが激しく動き何かが勢いよく飛び出して来てラーシャの顔面にぶつかる。
「きゃぁぁぁぁぁぁっ!何!?何!?」




