手応え
赤竜は触手をギリギリで掻い潜り、死竜に間合いを詰めると炎を一気に吐き出す。
「後もう少しだ!!死竜を燃やす尽くせ!!」
男の言葉に応えるように、死竜を焼き尽くすまで炎を吐き出す勢いをさらに強める赤竜。
だが死竜を燃やすことに全てを掛け過ぎて、自分たちの上がバチバチと音を鳴らし出した異変に気付くことができない。
「シンシア!!突っ込むわよ!」
ミラがその異変にいち早く気付き叫んだ。
【仕方ないね!】
シンシアは全速力で赤竜達の元へと向かうのと同時に、無数の雷が落ちて来るがその全てを寸前で避けて行く。
シンシアの瞬時の判断力と飛行能力の凄さにミラは内心舌を巻きながら、今度は自分の番だとばかりに通信石に触れた。
「キルディ!!聞こえてるわね!?貴方、ここで竜を二匹死なせたら試験なんて絶対受からないわよ!!隊長のくせに高みの見物をしてて仲間を殺したなんて洒落にならないんだから!」
『誰が高みの見物だ!?僕は障壁を張ってお前達を守ってるだろ!』
「嘘おっしゃい!!出来てないでしょ!?この役立たず!!」
『何だと!?』
「なら、証拠を見せなさいよ!私が合図をしたら障壁を張って!!」
『うるさい!僕が隊長だぞ!?命令するな!』
ミラは怒鳴り散らすキルディを無視して勝手にカウントを始める。
「三」
シンシアは赤竜の元に来ると躊躇うことなく、そのままの勢いでぶつかった。
「ニ」
驚いて赤竜が火を吹くのをやめると、そのままシンシアと縺れ合いながら死竜から僅かに離れた。
「一!今よ!!障壁を!!」
『ヴァルリア!』
空中で揉み合いになる赤竜とシンシアを包み込むように、障壁が展開されるのと同時に先程よりも威力を増した雷がミラ達の真上から少しずれて障壁に落ちる。
障壁がミシッと嫌な音を立てた瞬間、ミラ達は息を呑むが、なんとか障壁は持ち堪えて雷から守り切ると消滅した。
あのまま、あの場所にいたら今頃雷をまともに受けて、ヴァルリアの障壁でもきっと太刀打ちできなかっただろう。
「ふぅ…、よかったわ。急にごめんなさいね?」
とにかく作戦通りうまく行ってよかったと、ミラは胸を撫で下ろした。
「さぁ、ここから一旦離れるわよ!」
ミラの指示で赤竜とシンシアは、その後も雷を落として来るがなんとか全てを避けきり距離をとった。
命が危うくなると猛攻して来るのは、魔物と同じだとミラは思う。
死にそうになると、最後の悪あがきとばかりに暴れ回る。
つまり、死竜に攻撃が通じてないと思っていたが少しづつ確実に死竜を追い詰める事が出来ているのだ。
そうでなければ、闇と雷を同時になど操らないだろう。
わずかな手応えに、ミラは勇気づけられる。
「これなら勝てるわ!シンシア」
【相手は死竜。油断大敵だからね。気張んなさい】
「わかってるわ!」
その時、通信石からラーシャの声が聞こえてきた。




