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竜使いのラーシャ  作者: 紅月
再会と覚悟とスノウコルド
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氷壁

 ルーキスから降りると、ラーシャは目の前の大きな雪山を見て胸が締め付けられる気がした。

 その雪山は竜に積もって出来たもの。

 上下に少しも動かないのを見ると、あの竜は死んでしまったのだろう。

 イヴァンが弔いに行くと言っていたから覚悟はしていたが、やはり実際にこの目で見ると辛い。


「フロウ、頼む」


 イヴァンがそう言うと、フロウは咆哮を上げる。

 それと同時に氷壁が突き出し、ラーシャ達と死んだ竜を囲む。

 氷壁に完璧に囲まれて、暗闇に包まれるとルーキスが翼を羽ばたかせた。

 すると、翼が輝き出して氷壁内を淡い光で照らし出す。


「ほう、やるな。これならランタンはいらないな」


 イヴァンはそう言って出していたランタンをしまう。


「ルーキス、こんな事出来るのになんで言わなかったの?」

【使わないから、言う必要もなかったからな。契約前もこんな能力使ったら魔物が寄って来て面倒だし、魔物を狩るなら灯火の花の群生地で事足りるから使わなかった】

「えー…」


 結構便利な能力だからもっと早く教えて欲しかった。

 夜の見回りとかかなり明るくて便利なのでは?と思ったが、魔物のいい標的になると思い直し、外ではあまり使わない方がいいと結論に至った。


「イヴァン騎士団長、どうして氷壁を?」


 氷壁に触れて、厚さを調べていたセルジュが首を傾げた。


「わからないか?お前は頭がいいと思っていたんだがな」


 イヴァンの言葉にセルジュは不服そうに眉間に皺を寄せたが、何も言わない。

 それを見てイヴァンは、くつくつと笑う。


「お前は本当にリライに似ているな」


 その言葉に、ラーシャとセルジュは驚いて固まる。


「ラーシャの親父も知っている。ライゼだろう?」

「なんで父を知って…」

「俺たちはみんな同期で騎士団の二次試験で出会った。…ライゼは馬鹿だし、リライは馬鹿がつく程真面目だったな。…ちなみにその中にお前達の上司のデイルもいた」


 イヴァンが楽しそうに笑うのを初めて見たラーシャとセルジュは顔を見合わせた。


「氷壁の理由だったか…?答えは単純だ。魔物に邪魔されないようにだ。竜の死骸はスノウコルドに棲む魔物にとっては、いい食料になる」


 イヴァンは、笑みを消すとフロウと共に雪山へと向かい頭があるであろう場所の雪を手で搔く。

 ラーシャ達もイヴァンの元に駆け寄ると雪を掻くのを手伝い始め、その場にいる全員で竜の上を覆った雪を掻いていく。


「あ…っ」


 ラーシャが何かを見つけて、優しく雪を払い退けると中から瞼を閉じて永遠の眠りにつく竜の顔が姿を表した。

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