もう一度
話を聞いていたのだろう。ニクスに突然、尋ねられてラーシャは首を横に振った。
「わからない。私はそう思っていたけど…」
ルーキスはラーシャの肩に止まってると、ニクスの代わりに答える。
【竜は雪の中に埋まる事によって、世界を遮断して今までの生きてきた長い記憶を生と死の狭間の微睡の中で思い出してるんだ。幸せだった事も辛かった事も。全部】
「全部…?」
ラーシャの言葉にルーキスは頷いた。
【あぁ。そうやって生まれ変わる準備をしているんだ。…だから、悲しい事じゃない。ラーシャが心を痛める必要は無い】
「生まれ変わる準備…」
【生まれ変わって、また自分たちが出会ったパートナー達と再び再会できるように願いながらな】
ラーシャは肩に止まるルーキスを抱き上げて自分の顔の前に持ってくる。
「ルーキスも私ともう一度会いたいって願ってくれる…?」
【当たり前だろ。何度転生したってオレはもう一度お前とパートナーになりたい】
その言葉にラーシャは嬉しくなってギュッとルーキスを抱きしめた。
「私もだよ、ルーキス。ルーキスの今世で何度だって転生してまた会いに来るよ」
抱きしめ合うラーシャとルーキスを見てセルジュとニクスは顔を見合わせると笑い合う。
【もちろん、わかってると思うけど僕もセルジュに何度でも会いたいよ】
「知ってる。俺も会いたい】
ニクスは嬉しそうに頷いて、セルジュの腕に頭を擦り付けて甘えるような仕草をする。
そんなニクスを愛おしそうに目を細めてセルジュは微笑んだ。
「そこで何している?」
突然聞こえて来たよく通る低い声にラーシャ達は肩を震わせて振り返ると、そこには城に近い青い髪を風に揺らして無表情でコチラを見ているイヴァンの姿があった。




