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竜使いのラーシャ  作者: 紅月
再会と覚悟とスノウコルド
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不正

 コルネの話を聞いてイヴァンは、眉間に皺を寄せて不機嫌そうにため息をついた。


「そうか。…お前もそう思うか…」


 その言葉にコルネはやっぱりと思う。

 コルネが気づいてイヴァンが気づかないはずがない。


「どうしますか?今すぐ失格にしてバルギルザに返しますか?…同じ出身のリヒターもおそらくは不正をしているかもしれませんね」


 イヴァンは呻き声を上げてしばらく考えると、首を横に振った。


「証拠がない以上、不合格には出来ない」

「でも死にますよ?特にアルスはあのままでは…」

「それでも不合格には出来ない」

「では、どうしますか…」

「そうだな…。あまり使いたくは無い手だが、俺に考えがある。この件は俺に任せろ。お前はいつも通り見回りをしていれば良い」


 イヴァンの言葉にコルネは目を丸くした。

 てっきり、アルスとキルディを死なないように援護しろと指示されてると思っていた。


「女王陛下からは、試験の際死人が出るのは仕方ないと言われている」

「ですが…!」

「スノウコルドは厳しい地だ。それはこの国の者なら知っている事だ。それをわかってて不正をしたというならば、死んでも仕方ないだろう」

「…」


 イヴァンの言葉は冗談では無く本気なのは、わかっている。

 それに間違った事を言っているわけでは無い。スノウコルドに来るという事は、そういう事だ。

 わかってて送り出したのなら、それは送り出した人物の責任だろう。だが…。


「死ぬとわかっていて、試験を続けさせるのは気が引けますね」

「そうだな。だが、死なないかもしれない。ここに来てからも訓練はしているんだ。魔物に慣れたら、もう少ししたら使えるようにはなっているかもしれない」

「…そうですね。そうなる事を願うばかりです」


 コルネがそう言うと、イヴァンは再び書類に目を落とした。

 話はこれで終わりという事だろう。

 コルネは頭を下げてから、出て行こうとしてハッと思い出してイヴァンの方に向き直った。


「団長、報告し忘れていた事が」


 コルネはそう言って表情を曇らせ、その顔を見たイヴァンが怪訝そうな顔をした。


「何だ?」

「…今日の見回りで、死期の近い竜を発見しました。雪に覆われていて身体を動かす気力も無いようでした」

「…そうか」


 イヴァンは無表情で呟くと、はらはら舞い始めた雪を窓越しに眺める。


【吹雪になるな】


 フロウの言葉に無言でイヴァンは頷いた。

 スノウコルドは金竜と銀竜が初めて降り立った地とされ、この寒々しく厳しいだけの土地は竜にとっては聖地なのだ。

 そんな聖地で最期をここで迎えたいと願う竜が大勢いる。

 だが、聖地だろうが何だろうが、なにもこんな寒くて氷と雪に覆われた地を人生…いや、竜生と呼ぶべきか。竜生の最期の地に選ぶ必要など無いだろうと思う。

 雪に埋もれて独りで凍えながら死を待つのは心細く、寂しいだろうに。

 人の為に生きてくれた竜達の最期は暖かく穏やかな場所であって欲しいと、心からそう願っているがその願いが叶う事はほとんどない。


「団長…」


 心配そうなコルネの声にイヴァンは首を横に振る。


「大丈夫だ。その場所を詳しく教えろ。最期の時まで俺が面倒を見る」


 コルネはイヴァンに場所を説明すると、今度こそ部屋から出て行った。

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