隊長
雪煙を上げて地面へと叩きつけられるアイスワイムを受験生達は唖然とした顔でその光景を見つめる。
「ほう…いい反応だ」
イヴァンはそう言うと、通信石に触れた。
『アイスワイムをバナ…、受験生達だけで討伐してみせろ。他の騎士達は一切の手出しを認めない』
イヴァンの言葉で、戦闘体制に入っていた騎士達は動きを止めて戦線を離脱する。
これでいい、とイヴァンは一人頷いた後顔を顰めた。
「それにしても、ノエルのネーミングセンスはなんとかならないのか?何でもいいとは言ったが、バナナチームは無いだろう」
【同感】
イヴァンとフロウは同時にため息をつくと、表情を引き締めてバナナチームの戦闘を見守る。
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『みんな通信切っちゃダメよ!連携が取り難くなるから!』
最初に冷静さを取り戻したミラがすぐに指示を出すと、キルディが怒鳴り出した。
『僕が隊長だ!勝手に指示を出すな!!』
『だったら早く出しなさいよ!!』
ミラに怒鳴り返され、キルディはグッと言葉に詰まらせた後、近くにいた赤竜が目に入った。
赤竜なら、アイスワイムを燃やせるのではないか?
単細胞なあの魔物は今、ヴァルリアの障壁を壊そうと何度も何度も体当たりをしていて、隙だらけだ。
『おい!お前の赤竜でアイスワイムを燃やせ!!』
『え!?俺!?』
赤竜の主である男が叫ぶが、キルディは気にしない。
『赤竜に乗ってるのは、お前だけだろ!?ヴァルリアの障壁を消すのと同時にあいつを燃やせ!!』
キルディは怒鳴りつけるように指示を出すと、男の返事を聞かずに通信を切った。
わざわざ通信石に頼る必要もないし、何よりも、聞きたくもない頭の足りない奴らの声を聞いているだけでイライラする。
それに自分は騎士団長になる男だ。タイミングとかは、全て部下が隊長に合わせるもの。
「ヴァルリア!障壁を消せ!!」
ヴァルリアが障壁を消すのと、アイスワイムが障壁を打ち壊そうと飛び上がったタイミングが重なった。
アイスワイムは跳ね上がると、近くにいたキルディとヴァルリアに向かって大きな口を開けて身体を捻らせて襲い掛かってきた。




